難病「難治性血管腫・リンパ管腫」 飲み薬の治験開始


岐阜大医学部付属病院の小関道夫医師(小児科)らのグループは、難治性血管腫・リンパ管腫の患者にシロリムスという薬剤を投与し、効果を確かめる医師主導治験を始めた。従来の治療法は手術など外科的手法が中心だが、飲み薬で改善を図るのが特長。この疾患に対する世界初の薬事承認を目指す。 難治性血管腫・リンパ管腫は生まれつき血管やリンパ管が異常に多い病気。静脈奇形、青色ゴムまり様母斑症候群、リンパ管腫、リンパ管腫症、ゴーハム病、混合型脈管奇形、クリッペル・トレノネー・ウェバー症候群などを指す。全身のどこでも発症する可能性があり、見た目の問題や運動障害、出血などを繰り返し、命に関わることもある。国の小児慢性特定疾病、指定難病に認定されている。一般的な治療は、血管腫を手術で取り除く、レーザーで焼く、薬剤で血管などをつぶすといった方法だが、こうした治療法ができる医師は全国でも限られている。今回の治験で投与するシロリムスは、世界50カ国以上で臓器移植後の免疫抑制剤として使用されている。国内ではリンパ脈管筋腫症にのみ保険適用されている。グループは2017年にリンパ管腫、リンパ管腫症、ゴーハム病に対するシロリムスの医師主導治験を実施。11例中7例でリンパ管腫などが縮小したという。難治性の血管腫・リンパ管腫にも適用を拡大するため、岐阜大と京都府立医科大、九州大、慶応大が共同で治験を行う。現在、治験を受ける患者の登録を進めている。1年間薬を飲んでもらい、効果や副作用の有無を調べる。小関医師らのグループでは今回、新たに子ども向けに粒状の飲み薬を用意。治験に先立ち岐阜大医学部付属病院で生後2週間の乳児に投与したところ、腹部などにあった大きなリンパ管腫が6カ月後には明らかに縮小したとしている。医師主導治験は、製薬会社に代わって、薬や医療機器の治験を医師が主体になって進め、臨床現場への早期導入を目指すもの。小関医師は「患者の生活の質や症状の改善を目指している。この薬はその大きな一歩になるのではないかと期待している」と話す。【シロリムス】 細胞が分裂したり減ったりする際、細胞は互いに情報をやりとりして連携している。この情報をやりとりする定まった経路を「シグナル伝達経路」という。血管腫やリンパ管腫は、この経路の一つに遺伝子異常があり、発症することが最近の研究で分かってきた。血管やリンパ管を過剰に増やしてしまう。シロリムスは、この経路の中にある「mTOR」というタンパク質の一種の働きを抑える効果が期待されている。mTORの働きを抑えることで、血管腫やリンパ管腫を小さくしたり、症状を軽くしたりすることを狙う。

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