楽天グループの楽天メディカル(米カリフォルニア州)は25日、「光免疫療法」と呼ぶ新たながん治療で使う薬剤について、厚生労働省から製造販売の承認を得たと発表した。同療法は手術、放射線、抗がん剤、がん免疫薬に続く「第5の治療法」として注目され、新薬の承認は世界初。従来の治療が効かない頭頸部(けいぶ)がんの患者を対象に実用化される。承認された薬剤は光免疫療法で使う「セツキシマブ サロタロカンナトリウム」(製品名はアキャルックス)。がんの表面のたんぱく質にくっつく性質がある。レーザー光を当てると、化学反応を起こし、がん細胞をピンポイントで破壊する仕組みだ。厚労省は再発したり、切除が不能だったりする局所の頭頸部がんを対象に承認した。楽天メディカルの日本法人が今年3月、承認を申請した。厚労省は2019年、同療法の医薬品を世界に先駆けて日本で承認するスピード審査制度の対象に指定していた。また通常は3段階の臨床試験(治験)が必要だが、今年、最終のフェーズ3の治験結果を待たずに承認を受ける特例制度も適用した。重篤で有効な治療法が少ない病気の治療薬として、年内にも薬価が決まり、公的医療保険が適用される見通しだ。一方で、同社は市販後も有効性や安全性の詳しいデータを報告する必要がある。これらの条件を満たせなければ、新薬の承認が取り消される可能性もある。光免疫療法は米国の国立衛生研究所(NIH)でがんを研究する小林久隆氏が開発した療法で、15年に米国で治験を始めた。米国でのフェーズ2の治験では4割強の患者で、がん細胞が小さくなったり、消えたりする効果があった。同療法に使うレーザーシステムも9月2日に、厚労省から製造販売の承認を得た。楽天メディカルは今後、国内外の医療機関などと連携し、頭頸部がん以外への応用の研究も進める。