感染者と接触の可能性通知 自治体、活用へ登録増課題


新型コロナウイルスの感染者と店舗やイベント会場で接触した可能性を来店客らに通知するシステムを導入する自治体が相次いでいる。国が提供を始めた接触確認アプリと異なり、QRコードを活用する。利用するには事業者、来店客とも登録する必要があり、登録拡大がシステム有効活用に向けた課題となっている。神奈川県が運用するシステムはLINEを活用する。県に登録した事業者は県が発行したQRコードを施設に掲示。県のコロナ専用LINEアカウントに登録した来店客らがスマートフォンでQRコードを読み取ると、システムに来店履歴が蓄積される。感染者がQRコードを掲示した施設を利用していた場合、同じ施設を訪れていた人に体調が悪化したら専用窓口への連絡を促すメッセージを送付する。記載の連絡先に電話すると、スムーズな対応が受けられるという。体調管理を呼び掛け、感染者集団(クラスター)の発生を最小限に食い止める狙いだ。5月下旬の運用開始以降、QRコードの発行を受けた飲食店などは約1万6000件に上る。QRコードを使って感染リスクを通知するシステムは大阪府や東京都、千葉市、京都市などが導入している。大阪府はメールアドレスを登録してもらう方式で、利用している施設やイベントは約1万8300件、延べ42万9200人が登録した。登録情報は神奈川県は郵便番号や既往歴など、大阪府はメールアドレスだけとなる。両府県とも26日時点で通知した実績はないという。大阪市内では「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」や観光名所「通天閣」などが導入。通天閣を運営する通天閣観光(同市)の高井隆光社長は「来訪者の感染が発覚すると風評被害への不安があったが、お客さんの安全が第一だ。感染拡大防止に協力したい」と話す。政府は19日から、感染者と濃厚接触した可能性を知らせるアプリの提供を始めた。アプリの利用者同士が1メートル以内に15分以上いた場合に接触記録を自動的にスマホ内に蓄積する。自治体が導入しているQRコードを使うシステムは感染者との距離は問わず、同じ日などに利用していた場合に通知する。仕組みは異なるが、QRコードのシステムは安価に構築できるのが利点だ。大阪府の開発費は80万円で、1カ月の運営費は17万円という。課題はシステムの利用促進だ。神奈川県の登録施設数のうち飲食店は県内店舗の1割強にとどまる。来店客についても横浜市の小料理屋店主の小野寺志保さんは「自主的にQRコードを読み取る人はほとんどいない」と明かす。掲示されていた紙を見ていた20代の男性は「店ごとにQRコードを読み取るのは面倒。郵便番号などを登録するのも気がかり」と話す。大阪府は利用を促すため、QRコードを読み込んだスマホで店内の注文やキャッシュレス決済ができる機能を今夏にも追加する。神奈川県の黒岩祐治知事は「有効なシステムだが、普及はまだまだだ」としており、利用を働きかける方針だ。(横浜支局 宮川克也、大阪社会部 奥山美希)

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