オリンパス、使い捨て型内視鏡「21年めどに」


オリンパスは19年11月、竹内社長の就任以来初となる新たな経営戦略を発表。営業利益の95%を稼ぐ医療事業にさらに経営資源を集中させる考えを示した。主力の消化器内視鏡では、洗浄・滅菌して繰り返し使う既存製品に加え、シングルユース(単回使用)と呼ばれる使い捨て型製品を育てる方針を打ち出した。使い捨て型は滅菌状態ですぐに使いやすく、薬剤耐性菌などへの感染リスクが少ないのが特長だ。緊急時の処置や高度な感染管理が求められる場面で需要が増える見通し。竹内社長は「10年単位でみると内視鏡のかなりの部分がシングルユースに置き換わる可能性がある」と話す。米国では15年、オリンパス製の内視鏡を媒介とする院内感染も起きた。使い捨て型も供給できる体制を整えて、同様のリスクを下げる。使い捨て型は、既に米ボストン・サイエンティフィックが腎臓や尿管を検査する製品などを投入済み。十二指腸内視鏡も米国で製造販売の承認を得た。オリンパスは後発となるが、既存の内視鏡でシェア7割を持つ強みを生かして追撃する考えだ。ただ、使い捨て型に対応する製造技術や事業モデルを確立するハードルはある。従来品より「安く製造する技術が必要で、収益モデルも大きく異なる」(竹内社長)。12年以来となる消化器内視鏡の次期基幹製品については「20年度のできるだけ早い時期に発売したい」と述べた。まず日本や欧州で発売した後、米国などに投入するもよう。拡大観察と特殊光観察の両方に対応できる強みなどを生かし、次世代の消化器内視鏡の「デファクト(業界標準)になる」(竹内社長)と自信をのぞかせる。成長事業と位置づける手術用の治療器具などの分野で、M&A(合併・買収)を前向きに検討する考えも示した。患者への負担が小さい低侵襲手術では「大型のM&Aの必要性が高まっており、ビリオン(10億ドル)単位も想定せざるを得ない」とした。オリンパスは世界の医療機器大手と戦う体制に向け、昨年7月に株主の米バリューアクト・キャピタルから取締役を迎えた。効果については「厳しいことも言われるが、変革への力になるアドバイスをあらゆる側面からもらっている」とした。(企業報道部 大下淳一)

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