ICTによる看護師の死亡診断支援/武藤正樹氏


離島だけでなく都市部でも21年11月26日の中医協でICT利用による看護師の死亡診断支援の評価が議論された。事の発端は、2018年の診療報酬改定で、離島などの医師が本土に出かけて不在時に、離島に居る訪問看護師と本土の医師がICTで連絡を取り合って在宅での死亡診断を行うことが可能になったことだ。具体的な要件は、医師が定期的・計画的な訪問診療を行っていること、医師が直接の死亡診断を行うまでに12時間以上かかること、医療資源の少ない地域に居住する患者で、訪問看護を利用していることだ。このために医師と連携する訪問看護師に対して、法医学等に関する2日程度の研修を実施することになった。研修内容は、①法医学に関する講義(死因究明・死因統計制度、死因論、内因性急死、外因子等)、②法医学に関する実地研修(2体以上の死体検案、または解剖への立ち合い)、③看護に関する講義・演習(機器を用いたシミュレーション、患者・家族とのコミュニケーション等)。実際の流れは以下のようになる。まず研修を受けた看護師が、医師とリアルタイムの双方向コミュニケーションができるICT機器や物品を準備する。患者の死亡診断にあたって、看護師はICT端末を用いて、遠隔からの医師の指示により、遺体の観察や写真撮影を行い、記録とともに電子メールで医師に報告する。医師はその報告に基づいて、患者死亡の事実と異常死でないことを判断する。このようにして死亡診断が決まった段階で、看護師は死亡診断書を代理記入し、電子メールで医師に送付し、医師が確認を行う。そしてICTを通じてまず医師から患者の死亡について遺族に説明する。その後、看護師から遺族に死亡診断書を渡す。こうしたICT利用による死亡診断について、2018年の診療報酬改定では医療機関側には在宅患者訪問診療料に死亡診断加算として200点が加算されることになった。この加算算定件数は2020年6月分ですでに187回に達している。今後、団塊世代の大量死亡時代を前に、こうしたICT利用の死亡診断は、離島でなくとも都市部の夜間休日の在宅や介護施設での死亡でも活用すべきだろう。都市部でも医師不在の休日夜間の死亡に対して、いまだ死亡診断のためだけに患者をわざわざ救急病院に搬送することがある。本人や家族が静かに看取られたい、看取りたいと思っていても、死亡診断のために病院搬送となるのは不本意だろう。ICT利用による看護師と医師のリアルタイムの連携による死亡診断を、離島に限らず都市部でも普及させる必要がある。ICT利用の死亡診断の要件を見直してはどうだろうか?武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

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