iPS備蓄、日本人の4割適合 京都大学研究財団が論文 拒絶反応起きにくいタイプから作製


京都大学iPS細胞研究財団は17日、再生医療用の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を備蓄し、大学・研究機関や企業に提供する「ストック事業」の10年の成果を論文にまとめ、米科学誌オンライン版で発表した。拒絶反応が起きにくい白血球の型「HLA型ホモ」の人からの作製を進め、日本人の4割に適合するストックを構築できたとしている。ストック事業は2013年、京大iPS細胞研究所を中核に研究機関が連携するプロジェクトとして開始され、現在は同財団が引き継いでいる。来年3月で10年を迎えるのを前に、品質評価データや製造における課題、iPS細胞の提供先が実施した臨床試験について論文化した。発表では、拒絶反応が起きにくい白血球のタイプを持つ7人の末梢(まっしょう)血や臍帯(さいたい)血から27株を作製。これによって日本人の上位4位までのHLA型をカバーできたという。ストックの提供先の臨床試験については、17年3月に理化学研究所などがiPS細胞から作った網膜の細胞を移植する手術を実施して以降、これまで10以上の試験で使用された。これまでに、免疫拒絶など移植細胞を原因とする有害事象は報告されていないという。同財団は「10年を節目として現在までの状況と成果を一覧にすることで、新たな研究機関などの参入を促して裾野を広げたい」としている。

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