厚生労働省はこのほど、2020年3月31日時点の介護医療院の開設状況を公表し、全国で343施設、2万1738床に増えたことが分かった。一般社団法人日本慢性期医療協会理事で日本介護医療院協会の鈴木龍太会長は「開設2年を経て、いまだに2万床という数字は順調に移行が進んでいるとは言い切れないと考える」とコメントしている。介護医療院は24年3月で廃止される療養病床からの移行先として、前回の介護報酬改定と第7期介護保険事業計画から導入された。優先的に移行できる療養病床の内訳は、18年時点で、介護療養病床が約5万床、17年度まで25対1の療養病床だった経過措置病床が約6万床、介護療養病床から転換した介療養型老健が約9000床で、合計約12万床が対象とされている。最新の調査結果では、療養機能強化型介護療養病床相当の「Ⅰ型」が230施設(1万5770床)、老人保健施設相当の「Ⅱ型」が110施設(5968床)。転換元をみると、介護療養病床からが220施設(うち介護療養型老健からは68施設)、医療療養病床からは75施設にとどまっている。このほか、Ⅰ型とⅡ型の混合施設が3施設だった。都道府県別では、宮城県がまだ設置ゼロの状態で、唯一介護医療院のない県となった。
多い自治体は福岡県(30施設、2074床)、富山県(19施設、1158床)、北海道(18施設、940床)など。また収容数では京都府が1795床(10施設)で全国2位に急浮上している。なお、介護療養病床が約4000床と全国で最も多い東京都は8件、510床で伸び悩んでいる状態だが、「4月以降に1000床を超えたという情報があり、ようやく進み始めたとのことでほっとしている」(鈴木会長)。具体的な議論が始まった21年度介護報酬改定と第8期介護保険事業計画の策定においても、介護医療院への転換は重要施策の1つとなっている。今回の調査結果に関連して論点になりそうなのが移行定着支援加算の取り扱いだ。介護医療院への転換日から起算して1年間に限って算定できるとされ、期限は21年3月末までになっている。逆にいえば、移行定着支援加算を満期で取得するには20年3月31日までに転換を完了しておく必要があるが、現行の仕組みではインセンティブ性が薄まっている。日慢協は19年度から「手続きを簡素化・簡略化するとともに、移行定着支援加算の算定可能期間を少なくとも2年間延長すべき」との考えを示しており、厚労省に対し要望活動を行ってきた。今後の動きが注目される。