厚生労働省は19日、2024年度の介護保険制度の見直しに向けた意見書案を介護保険部会で提示し、大筋了承された。部会では、65歳以上の高齢者が負担する介護保険料の引き上げなどが検討されたが、医療保険料引き上げとのダブル負担を懸念する声もあり、結論を先送りする。厚労省は、来年夏までに方向性を決めたい考えだ。介護保険制度は、原則3年に1度見直される。通常は年末年始に方針が決められるが、一部議題だけ継続審議される異例の展開になった。高齢者の負担増につながることから、慎重な議論を歓迎する委員がいた一方、別の委員からは「何一つ見直しが進んでいない」と厳しい声も上がった。見直し案では、介護事業者に対し、財務状況が分かる資料公表の義務付けが適当とされた。利用者の施設選びや、介護従事者の処遇改善の検討に活用されるとした。また、専門家が介護状態を判断する自治体の「介護認定審査会」で、オンライン開催を本格導入する方針を盛り込んだ。ケアプランの有料化や要介護1、2に認定された人の生活援助を国の事業から市区町村に移す見直しは今回盛り込まれない。一方、介護保険サービス利用時の自己負担が2割となる対象者の拡大や、一定所得がある65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の引き上げは、引き続き来年審議されることになった。先行して議論されてきた医療保険制度の見直しでは、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料について、高所得者が支払う年間上限額を段階的に引き上げる方針などを決定した。一方、介護分野の負担増については、与党内からも慎重な対応を求める声が上がっていた。【小鍜冶孝志】