小児科医に聞く「子どもの花粉症対策」 新型コロナウイルス感染症との初期症状の違いも


イメージ花粉症のつらい症状に悩まされる子どもが年々増えている。ロート製薬が0~16歳の子ども2,618人の親に聞いた「子どもの花粉症」に関するアンケート調査の結果によると、「子どもが花粉症だと思う」と答えた親は2012年は25.7%、2015年は33.4%で、3年間で増加している。また、2015年のアンケートで「0歳~10歳」までに発症した子どもが82.3%という結果が出ており、発症年齢の低年齢化も指摘されている。花粉症によるくしゃみや鼻水、鼻や目、皮膚のかゆみは集中力の低下を招き、症状の1つとして現れることがある倦怠感も、日常・学校生活におけるQOL(Quality of Life、生活の質)も下げてしまう。今年は新型コロナウイルスの影響でマスク不足の懸念もあり、子どもを持つ親として心配のタネは尽きない。そこで、子育て世代に人気の街・武蔵小杉にある「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」の院長で、子どものアレルギー疾患に詳しい大熊喜彰先生に、子どもの花粉症治療や家庭でできる対策、かぜや新型コロナウイルス感染症との症状の違いなどについて、話を聞いた。Q.大人と子どもの花粉症の症状の違いは?子どもにどんな症状が出たら、花粉症と疑えばよいでしょうか?大人でも子どもでも「くしゃみ」「鼻水」「鼻詰まり」「目のかゆみ」などの花粉症に伴う症状は同じですが、子どもの場合は、症状を訴えることが難しいので診断が難しい場合があります。ただ、子どもは正直なので、スギ花粉症の季節(2~4月)に目をかく、涙目になる、よく鼻をすする、ぬぐう、(かゆいため)鼻をいじるなどの行動に着目することで花粉症を疑うことができます。また、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー性疾患の既往があるお子さんや、家族にアレルギー性疾患を持つ方が多いケースで上記のような行動があった場合も、強く花粉症を疑います。余談ですが、これまでの論文や自身の診療経験から、花粉症を発症した最低年齢は1歳と考えておりますので、当院では乳児に花粉症と診断することはありません。Q.子どもが花粉症かも…と思ったら、何科を受診すればよいですか?小児科でも耳鼻科でもアレルギー科でもよいとは思いますが、毎年春の問題なので、しっかりと症状やそれに伴う行動に関する問診を行い、鼻粘膜を含めた診察を行い、本人やご家族の希望 (眠くなりにくい薬がよい、1日に1回の内服薬がよいなど)を聞いてくれて、状態を丁寧に説明してくれる「かかりつけ医」を受診されることをお勧めします。診断には、詳細な問診に加えて鼻粘膜の状態の評価とアレルギー検査(採血)が重要なので、これらの検査が行える医院がよいでしょう。私は小児科医ですので、そのほかのアレルギー疾患(気管支喘息やアトピー性皮膚炎など)を合併していることが多いことから、これらも併せて管理できることも重要と考えています。Q.子どもの花粉症はどんな治療をしますか?「薬物療法」や「舌下免疫療法」などの治療を行います。症状を緩和させる対症療法となる「薬物治療」では、鼻炎症状に対しては内服薬、点鼻薬が、目の結膜炎症状に対しては点眼薬があります。症状のタイプ(くしゃみが多く鼻水がだらだら垂れるタイプ、鼻づまりがメインのタイプ等)や1日の内服・点眼の回数によって選択する薬の種類や組み合わせが変わってくるので、その点を医師としっかり相談しましょう。また、2014年からスギ花粉症に対する「アレルゲン免疫療法」が保険適用で行われるようになりました。アレルゲン免疫療法は、アレルゲン(アレルギー症状を引き起こす物質)を少量から投与することで体を慣らし、アレルギー症状を和らげることを目的とした治療法です。最近では、治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が5歳以上の小児の患者さんに行われるようになったことから、自宅で治療を継続することができ、病院を受診する回数も以前より少なくなってきています。「舌下免疫療法」は、長期にわたって症状を抑えられる可能性や、対症療法薬の使用量や種類を減らせる可能性が期待されています。一方で、治療開始のタイミングや気を付けるべき症状、守らなければいけない注意点があります。また、「舌下免疫療法」に用いる処方薬は処方資格を得ている医師のみが処方できるものなので、どの医院でもできるわけではありません。Q.症状が酷くならないために、親が家庭でできる対策はありますか?先ほどご紹介した「薬物療法」や「舌下免疫療法」などの治療と同等に、まずはアレルゲンである花粉への暴露を減らすことが重要です。マスクを着用したり、花粉の侵入を防ぐフードが付いた花粉症用メガネを掛けたりすることも有効です。こまめに掃除機をかけて室内に入った花粉を除去する、睡眠時に花粉を吸いこまないように寝具をこまめに清掃することも大切です。時折、「外遊びを控える」といった内容の記載を見ることがありますが、私は子どもの心身の発達には外遊びは非常に重要だと考えていることから、むしろ外遊びをさせてあげられるように適切な治療法(舌下免疫療法を含む)を選択してあげることが重要と考えています。Q.子どもに鼻水や微熱、だるさ、頭痛などの症状があったら、今年は花粉症だけでなく新型コロナウイルス感染症も心配です。花粉症と一般的なかぜや新型コロナウイルスなどの感染症の「初期症状の見分け方」はありますか?一見しただけでは同じ症状ですので、感染症と区別することは難しいです。毎年の花粉症の時期(スギ花粉では2~4月)にくしゃみ・鼻水が見られるが、発熱はない・咳は少ない・症状が1週間以上持続するなどの場合は花粉症の可能性が高いと思われます。また、花粉が多く飛ぶ条件下(最高気温が高い日、雨が降った翌日の晴れ、風が強い日)で症状が悪化する場合も、花粉症を疑うきっかけになります。Q.そもそも、花粉症を放置しておくと、よくないのでしょうか?花粉症は、滲出性中耳炎や副鼻腔炎を合併することがあります。また、気管支喘息とアレルギー性鼻炎は合併していることが多く、共にしっかりとした治療と予防が必要な疾患です。花粉症を疑う症状があったら放置せず、まずは病院を受診しましょう。しっかりとした診断・治療を受けることは、花粉症に伴う症状を軽減するばかりではなく、合併するアレルギー性疾患の発見と適切な管理につながります。Q.子どもの花粉症は遺伝しますか?花粉症は、もともと持って生まれた複数の遺伝子の影響と、育ってきた環境の影響が相互に作用して発症すると考えられています。つまり、アレルギー性疾患を持つ方が多いご家庭のお子さんが、花粉症を発症する可能性はある程度高いと考えられます。一方で、全くアレルギー性疾患を持つ方がいないご家庭のお子さんでも、花粉症を発症する可能性はあるわけです。Q.花粉症に効くといわれている「乳酸菌」「甜茶(てんちゃ)」「シソ」などの食べ物や成分を取ることは、効果が期待できますか? 医師の目線でもおすすめでしょうか?質問に記載されているような食品で花粉症の症状が軽くなる可能性はあるのかもしれませんが、つらい症状に困っている患者さんに提示できるだけのしっかりとした科学的根拠(エビデンス)はまだないと思います。それらの食品で花粉症の症状が軽くなったと感じている方を否定する材料もありませんので、効いていると感じている方は続けていただいてよいと思います。しかし、現状では医師が自信をもって勧めている状況ではないと思います。<文/小宮山のんの>

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