抗がん作用期待できる成分、植物の茎から発見 高知の植物園


高知県立牧野植物園は9日、名古屋市立大学の研究グループと共同で、キョウチクトウ科の植物の茎から抗がん作用が期待できる成分を発見したと発表した。川原信夫園長は「園が保有する植物資源が研究に貢献できたことは大きな意義がある」と喜んでいる。共同研究したのは、植物園の水上元・前園長と、名古屋市大大学院薬学研究科の林秀敏教授らで構成するグループ。市大は細胞で起きている、異常なたんぱく質を除去して正常化させる「小胞体ストレス応答」に着目した。この作用が過剰に起きると糖尿病やがんの原因になることが分かっており、抑える物質を探していた。植物由来で作用を抑える物質を探すため、植物園は作成・保存していた約700種類の植物のエキスを提供した。実験の結果、ミャンマーで採取したキョウチクトウ科の植物の茎から抽出した「ペリプロシン」という成分が有効であることを発見した。ペリプロシンは、心不全の治療に使われる「強心配糖体」という化合物と同じ構造を持つことが判明。チームはペリプロシンを含む強心配糖体を、血液がんの一種である多発性骨髄種の細胞に試したところ、がん細胞の増殖を抑える効果が世界で初めて確認された。成果は5月、論文として海外科学雑誌に発表された。具体的な創薬には今後10年単位で時間がかかる見通し。研究チームの一員である植物園の松野倫代研究員(薬学)は「心不全治療に使う物質ががんにも有効だとはだれも考えなかったこと。今回の成果は、従来より副作用の少ない抗がん剤につながる可能性がある」と画期的な創薬に期待している。植物園は約2000種類の植物のエキスを保管しており、今後も研究活動、商品や機能性食品開発に協力したい考えだ。川原園長は「特に高知や四国というポイントで協力し、県民に成果を還元したい」と話している。植物園と名古屋市大は2016年から協力関係にあり、今年3月に正式に連携協定を結んだ。今回が連携の成果の第一弾となる。【小林理】

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