バイオ3Dプリンターで導管作り神経再生 移植治験開始へ 京都大病院


細胞で立体的な組織を作り出す「バイオ3Dプリンター」を駆使して、神経の周りを覆う導管(神経導管)を作製し、末梢(まっしょう)神経を損傷した患者に移植する治験を開始すると、京都大病院などの研究チームが25日、発表した。3例を目標とし、2022年度末までに安全性などの確認を終える予定。研究チームは17年、医療ベンチャー「サイフューズ」(東京都)が開発した同プリンターを使い、欠損した神経を再生する技術開発に成功。その後、人間の皮膚から採取した細胞の塊で神経導管を作製し、末梢神経が欠損したラットの大腿(だいたい)部に移植すると、神経が導管の空洞部をつたって伸び、欠損部分がつながることを確認した。治験では、患者の腹部か「そけい部」から1センチ×2センチほどの皮膚を採取。細胞を培養し、その塊を「素材」として3Dプリンターで形を作った後、時間をおいて細胞を定着させる。約2カ月かけて内径約2ミリ、長さ約2・4センチの神経導管を完成させ、損傷部に移植する。対象となる患者の条件は▽外傷などによる末梢神経の断裂や欠損部位が手の関節から遠くにある▽神経が傷付いてから6カ月以内▽20歳以上60歳以下――など。手や足などの末梢神経が損傷した場合、ふくらはぎなどから取った自分の健康な神経や、コラーゲンなどから作った人工神経を移植する手法があるが、感覚障害や痛みなどの後遺症が懸念されていた。今回の手法では、太くて良好な神経が再生されるため、これらの問題も解決できるという。25日に記者会見した同病院整形外科の松田秀一教授は「患者さんにとって非常に良い治療の選択肢の一つになるはずだ」と話した。【福富智】

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