生体情報分析テック、米GoogleやAppleも熱視線


人工知能(AI)を活用した病気の発見や一人ひとりの遺伝子情報に基づいて治療法を選ぶ「精密医療」など、生命が持つ様々な情報の取り込み、シークエンシング(ゲノム配列の読み取り)、解析を手掛ける企業が医療に変革をもたらしている。「オミックス」と呼ばれるこの分野で扱う情報は全遺伝情報(ゲノム)、全転写産物(トランスクリプトーム)、全たんぱく質(プロテオーム)、全代謝物(メタボローム)に及ぶ。病気の早期発見を可能にする米キャリアス(Karius)や、患者が自分の遺伝性リスクを把握できるよう支援する米ジェノムメディカル(Genome Medical)などが、この分野の主な企業だ。ここ数年、患者の治療の至る箇所でオミックスを活用する新興企業が台頭している。医療関係者らはこうしたテクノロジーなどを駆使して患者の予後を改善し、その過程でコストも削減している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けて医療システムでのオミックスの役割はさらに高まっている。コロナ対策では、迅速なシークエンシングと患者一人一人に応じた治療を提供することが最も重要になっている。今回のリポートではCBインサイツのプラットフォームを活用し、オミックス企業約60社を抜き出した。各社を遺伝性リスクの検査や創薬など8つのカテゴリーに分類した。カテゴリーは一部重複している場合もある。主なユースケースに応じて各社を配置している。■カテゴリーの内訳・シークエンシング:新しいシークエンシング技術を開発し、このサービスを他社に提供している企業。中国の華大智造(MGI Tech)の資金調達総額は12億ドルとマップに記載した企業のなかで最も多い。同社は生命科学企業や医療機関にシークエンシングサービスを提供している。・病気の発見:病気の発見や診断を手掛ける企業。早期のがん発見に力を入れている企業が多い。米有力ベンチャーキャピタル(VC)アンドリーセン・ホロウィッツはこのほど、米フリーノーム(Freenome)の資金調達(調達額2億7000万ドル)に参加した。フリーノームはAIを活用して血液サンプルのDNA、RNA、たんぱく質などのバイオマーカーを解析し、がんの早期診断を支援する。・遺伝性リスクの検査:がんや心臓病などの疾患の遺伝性リスクの有無を調べるために、遺伝子検査サービスを提供する企業。米カラーゲノミクス(Color Genomics)は医師の依頼に基づき、一般的な遺伝性のがんに関連する30の遺伝子を検査する。同社は昨年、米グーグルの関連会社と米アップルの双方と提携した。・D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー):消費者に遺伝子サービスを直接提供する企業。DNA検査を手掛ける米トゥエンティースリー・アンド・ミー(23andMe)のサービス利用者は1200万人以上に上る。同社の調達総額は7億9000万ドルを超え、企業価値は25億ドルに達している。同社を含むこの分野の多くの企業の副次的なビジネスモデルは、創薬に役立てるためにデータを製薬会社に販売することだ。・人間以外への対応:動植物や微生物など人間以外から取得したオミックス情報を読み取り、解析する企業。米VCグーグルベンチャーズが出資する米ベンソンヒル・バイオシステムズ(Benson Hill Biosystems)は、機械学習とゲノム編集プラットフォーム「クロップOS」を活用して顧客企業の農作物の品質や収穫量の改善を支援する。・創薬:オミックス情報を使って病気の治療法を開発する企業。米キャリーオペ(Kallyope)は米VCのラックスキャピタルやキャスディンキャピタル、イルミナベンチャーズなどから2億4000万ドル以上を調達している。シークエンシングやバイオインフォマティクス(生命情報科学)、神経回路のマッピング、分子生物学を組み合わせることで、脳と腸の相関にターゲットを定めた治療法を開発する。・精密医療:患者一人一人に応じた治療の提供を可能にする企業。米テンプス(Tempus)は、医師がそれぞれのがん患者に応じた治療を提供できるよう、オミックスデータベースと機械学習プラットフォームの開発に取り組んでいる。テンプスの企業価値は50億ドルで、今回のマップに掲載した企業の中で最も高い。・解析&ソフトウエア:オミックス情報を使いやすくし、エンドユーザー(大半は医師)にとっての価値創出の機会を増やそうとしている企業。米パラダイム4(Paradigm4)はオミックス情報の先進的な解析のために設計されたデータベースシステムを開発し、生命科学企業による発見プロセスの迅速化を可能にしている。

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