iPS細胞から膵臓細胞を効率的作製 糖尿病治療に期待


ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、膵臓(すいぞう)でインスリンを分泌する「β(ベータ)細胞」の前段階にあたる細胞を効率的に作製する方法を開発したと、京都大iPS細胞研究所の長船(おさふね)健二教授(再生医学)らの研究グループが30日、米科学誌電子版に発表した。膵臓のβ細胞の数が減ることで発症する糖尿病患者の治療法などへの応用が期待される。現在、糖尿病には膵臓移植などでβ細胞を補う治療が行われているが、ドナー不足が問題とされる。iPS細胞からβ細胞や膵臓を作り移植する治療法の開発が期待されているが、作製には多くの作業工程を必要とし、コスト面や安定性で課題を抱えてきた。こうしたなか研究グループは、β細胞になる前段階の「膵前駆細胞」をより低コストで大量に作製しようと、どの物質が膵前駆細胞の増殖を促すかを調べたところ「WNT7B」というタンパク質が大きく関わっていることを発見した。さらに、このタンパク質を使うことで、従来の方法では20~30倍までしか増やせなかった膵前駆細胞を、より大量に作製することができたという。長船教授は「WNT7Bを安定して作る技術ができれば、将来の糖尿病治療に必要となる細胞を安定して安価に供給できるようになる」としている。

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