中外製薬、クラウドで創薬データ共有 コスト10分の1


中外製薬は、創薬のために部門横断でゲノムデータなどを扱う基盤を社外とつなぐ活動を本格的に始めた。米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービスを使い、2020年末までに100件の共同研究プロジェクト用の環境を基盤上に整備する。自社でサーバーなどを調達するのに比べ、環境整備の費用を10分の1に減らしながら革新的な新薬の創出を目指す。同基盤は「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」を使い、社内にあるデータの部門横断的な活用や、学術機関や病院などとの共同研究に使う。ゲノムデータなど機密性の高いデータを安全に保管、利用できるという。まずヒトの遺伝情報を解析したゲノム配列データについて、本格導入する前に効果を見極める「PoC(概念実証)」向けの環境を用意した。従来方式の試算では数千万円かかるところ、数百万円で済んだ。必要な環境の構築を自動化するツールをクラウドと併用し、対象の規模を広げても同様の効果を期待できるという。またサーバーの調達などに6カ月かかっていた期間は2週間に短縮できるとみている。中外は15年にAWSを一部で導入した。処理能力を素早く高められたり、誰がどんな操作をしたかといった記録を細かく残せたりする点を評価し、機密性の高いデータを利活用する基盤でも採用を決めた。同社のデジタル・IT(情報技術)分野を担当する志済聡子執行役員は「デジタル戦略の柱として、創薬のみならず臨床試験や製造、営業などの効率化も目指す」と語る。

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