今年の「世界の100人」に選ばれた大阪大教授 どんな業績?


米誌タイムが選ぶ今年の「世界で最も影響力のある100人」に、映画監督の宮崎駿さんらとともに名を連ねたのが、大阪大の林克彦教授(生殖遺伝学)だ。いったいどんな人なのか。林さんの大きな成果の一つが「雄同士で子どもをつくった」ことだ。雄と雌から子どもができるという生物の常識を打ち破った。林さんは、体のさまざまな部位の細胞になる能力を持たせたiPS細胞を使った。雄マウスのiPS細胞から卵子を作り、別の雄マウスの精子と受精させて子マウスを誕生させ、2023年に英科学誌ネイチャーに発表した。生まれてきたマウスに異常はなく、生殖能力もあった。林さんはこの年、優れた業績を打ち立てた研究者をネイチャーが選出する「今年の10人」にも選ばれた。ネイチャーの特集記事では、オーストラリアの生殖生物学者、ロバート・ギルクリスト氏が「椅子から落ちた。驚くべき成果だ」とたたえた。林さんは明治大農学部卒。京都大准教授や九州大教授などを経て、21年に大阪大教授に着任した。九州大のホームページによると、明治大の3年生だったときに「体外受精の実習で生命の始まりに触れ、感動した」ことが研究者を目指したきっかけという。タイム誌は今回の選出について、「不妊の問題を抱える人々や、いつか自分の子どもを持ちたいと願う同性カップルらに希望を与えている」などと評価した。一方、林さん自身は、人への応用について3月の取材時に「理論上はできると考えられるが、マウスが生まれたからといって安全性が確認されたわけではない。さらに、社会構造を変えることになるので、受け入れられる体制が整わなければ行うべきではない」と話した。【寺町六花】

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