2025年大阪・関西万博の展示の目玉として期待されているのが、人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術を活用して作る「生きる心臓モデル」だ。開発する心臓血管外科医の澤芳樹大阪大名誉教授(68)は「体の中のメカニズムを見えるように表現したい。命を感じてほしい」と語り、有効な展示方法を模索している。赤い培養液が入ったシャーレの中でパタパタと動く、指先ほどの小さな円形の物体。約50万個のiPS細胞から作った直径約2センチ厚さ0・1ミリの心筋シートが、まるで生き物のように全身をくねらせ、人の脈拍より少し遅い速度で拍動していた。心筋シートはiPS細胞から作製した心筋細胞をシート状にしたもの。これを貼り合わせるなどして心臓モデルを作る。再生医療の未来の可能性を示すため、大阪府と大阪市が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」での展示に向けて開発が進められている。心筋シートは、パソナグループのパビリオン「パソナ ネーチャーバース」でも展示する予定だ。説明方法を変えることで、両館を通じて理解を深めてもらう。