コンタクトレンズにも搭載可能な感度2000倍に改善できる
新しい原理の無線回路計測に成功 ― 糖尿病網膜症や敗血症を無線で測るシステム開発へ ―
詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。
【発表のポイント】
◆ スマートコンタクトレンズ等にも搭載可能な、新しい原理の回線回路(パリティ時間(PT)対称性共振結合回路(並列接続))を実現した。
◆ 涙中糖度(0.1-0.6 mM)を無線で計測することに成功し、皮膚を介して血中乳酸を(0.0–4.0 mM)無線で計測することに成功した。
◆ 本成果は、糖尿病網膜症や敗血症を無線で測るシステムの開発につながると期待される。
早稲田大学大学院情報生産システム研究科の高松 泰輝(たかまつ たいき)助手、三宅 丈雄(みやけ たけお)教授の研究グループは、新しい原理の無線回路(パリティ時間(PT)対称性共振結合回路(並列接続))を開発し、センサ感度が2000倍に改善することを確かめました。本システムは、検出器側に負性抵抗を搭載することで効果を得るため、従来型センサ回路をそのまま利用できる特徴を有しています。本技術によって、これまで計測が困難であった涙中糖度(0.1 – 0.6 mM)の無線計測を実現しました。すなわち、健常者(平均値0.16±0.03 mM, 0.1-0.3 mM)と糖尿病患者((平均値0.35±0.04 mM, 0.15-0.6 mM)を数値で評価することが可能であり、世界で失明原因第1位の糖尿病網膜症の治療効果や予防に貢献し得るものとして期待されます。さらに、皮膚を介した血中乳酸の計測も本計測システムで実現したため、2.0mM以上で致死率が増加する敗血症のモニタリングへの応用も期待されます。
本研究成果は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)大学・エコシステム推進型大学推進型、東電記念財団、カシオ科学振興財団の助成によって実施されたものであり、「Advanced Materials Technologies」に4月8日(土)にオンライン版で公開されました。
微弱な生体信号を無線で測る新しい原理の共振結合回路システム
■研究の波及効果や社会的影響
今回の研究により、高感度で高利得な無線センサおよび計測システムを構築することに成功しました。ここでは、敗血症(乳酸アシドーシス)のバイオマーカーで知られる血中乳酸を測定対象とし、敗血症が疑われる患者の乳酸濃度(0-4.0 mM)を無線で測れることを確かめました。従って、本技術は、従来技術と比較して高感度・高利得などの技術的優位性を持ち、かつ、体表および体内埋め込みなど目的とする無線計測システム(センサ・リーダ・システム)として、幅広く利用することができます。
■今後の課題・研究者のコメント
今後はこの研究成果の事業化に向け、本計測レンズを用いて医学部眼科の先生と共同で臨床試験に取り組んでいきます。また、本プロジェクトにご興味のある企業からのお問い合わせをお待ちしています。
■論文情報
雑誌名:Advanced Materials Technologies
論文名:Wearable, Implantable, Parity-Time Symmetric Bioresonators for Extremely Small Biological Signal Monitoring
執筆者名(所属機関名):Taiki Takamatsu, Y. Sijie, Takeo Miyake(Waseda University)
掲載日時:2023年4月8日(土)
掲載URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/admt.202201704
DOI:10.1002/admt.202201704
■研究助成
日本医療研究開発機構 官民による若手研究者発掘支援事業(Grant Number JP20he0422009j0001)、
研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)大学・エコシステム推進型大学推進型、
東電記念財団、カシオ科学振興財団