厚生労働省と文部科学省の合同部会は10日、ゲノム編集技術を使ってヒトの受精卵を改変し、遺伝性疾患の原因解明や治療法を探る基礎研究を進める上での指針案を了承した。併せて不妊治療に役立てる目的に限り、提供された精子と卵子から新たに受精卵を作り、ゲノム編集で改変する基礎研究に関する別の指針案も了承した。ヒト受精卵にゲノム編集を用いる基礎研究はこれまで、不妊治療で余った受精卵を不妊治療に役立てる目的に限って認められてきた。政府の総合科学技術・イノベーション会議は2019年、遺伝性疾患の原因解明や治療法を探る基礎研究でも受精卵にゲノム編集を施すことを容認していた。指針案は、研究の目的や内容を受精卵などの提供者へ十分説明する機会の確保を求めた。また、研究機関の倫理委員会が遺伝医学の専門家に意見を求めることなども盛り込んだ。部会では、ゲノム編集を施した受精卵から作ったES細胞(胚性幹細胞)を不妊治療や遺伝性疾患の研究に使うことについても議論され、人間や動物への移植を禁じることなどが指針案に盛り込まれた。いずれの指針案も今後、意見公募などを経て指針となる。一方、ゲノム編集で改変した受精卵を母胎に戻す臨床研究については、安全性や倫理面の課題から、厚労省の専門委員会が法制化を含め規制強化の必要性を提言する報告書をまとめている。【渡辺諒、岩崎歩】