京都大学などの研究チームは、iPS細胞からつくった神経細胞を患者の脳に移植した治験について、神経細胞をつくる工程や、安全性を確認する手法の詳しい内容を明らかにした。情報を公開し、再生医療の規格化につなげることをめざす。英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに6日発表した。チームは2018年、iPS細胞からつくった神経細胞を、パーキンソン病の患者の脳に移植した。iPS細胞については、様々な細胞に変化することから、目的外の細胞や、がん細胞に変化することが懸念されていた。そこで、研究チームはiPS細胞の形がそろっているかなどをチェックした上で、神経細胞に変化させた。神経細胞の中に別の細胞が紛れていないかどうかも調べた。また、iPS細胞や変化させた神経細胞のがん化リスクを調べるためにゲノム(全遺伝情報)を解析し、がん関連遺伝子に変異がないことなどを確かめた。これらの解析を複数回繰り返して同じ結果が出ることを示した上で、まず神経細胞をマウスに移植。がん化は起きなかった。変化していないiPS細胞を意図的に混入させて移植した場合もがん化せず、安全だと判断した。こうしたデータを、治験を管轄する医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請し、患者への移植が実現したとしている。パーキンソン病の治験を主導する高橋淳・京大教授は「世界中でいろいろな再生医療が進められているが、これだけのことをきっちりやってから、人に使うべきだ。情報を共有して、規制や規格をつくる参考にしてほしい」と話している。(野中良祐)