摂取のDHAなど画像化 海馬、小脳到達を証明 福大食農学類の吉永准教授


福島大食農学類の吉永和明准教授(36)は、同学類の平修教授(45)の協力を得て、マウスが脳の重要な栄養素として知られるドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸を摂取すると、脳内の海馬や小脳に到達することを明らかにした。必須脂肪酸であるDHAやアラキドン酸は脳の記憶力や認知能力などを高める効果があるとされてきたが、脳内のどこの器官に届いているかは科学的に証明されていなかった。吉永准教授は体内に存在しているDHAとアラキドン酸を区別する「ラベル化」を行い、それぞれをマウスに毎日摂取させ、ゼロ日、二日、八日後の脳内状態を調査した。同大の最新分析機器「イメージング質量分析装置」を用いて脳内の断面を画像化したところ、海馬や小脳に分布しているのを確認。日の経過とともに増加していることが判明した。マウスが摂取したDHAやアラキドン酸が脳内に運ばれたことが分かった。研究論文はアメリカ化学会の国際誌「アナリティカル・ケミストリー」に掲載された。吉永准教授は「科学的な裏付けが取れたことで認知症など病気の予防やサプリメント開発への応用などが期待できる」と意義を強調した。■平教授 植物ホルモン可視化成功同じイメージング質量分析を活用した研究成果として、平教授は植物ホルモンの可視化に成功した。ナノメートルサイズの粒子を用いた独自の質量分析法で、イネの根の断面を解析。断面図には植物の気孔の開閉に作用するとされているアブシシン酸(ABA)や、芽と葉の形成に関連するトランスゼアチン(tZ)など九つの植物ホルモンの存在が「見える化」された。今後は光合成や成長時に、ホルモンが作用するメカニズムの解明に役立つことが期待される。平教授は「研究を発展させていくことで、人々の食や健康、農業の発展に結び付けていきたい」と語った。研究論文はアメリカ化学会の国際誌「ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー」に掲載された。

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