世界初、人気猫アメリカンショートヘアのゲノム解析成功 三島・国立遺伝研究所チーム


国立遺伝学研究所(三島市)の中村保一教授(54)らの研究チームが、代表的な飼い猫の一つであるアメリカンショートヘア種のゲノム(全遺伝情報)解析に世界で初めて成功した。品種ごとに異なる遺伝子の特徴から発生しやすい病気の種類を類推し、個々の猫に合った治療法の提供を目指す。今後、他の品種のゲノム解析も進めつつ、数世代にわたる遺伝子と病気の関連性も調べていく。
 猫の血液に含まれる白血球からDNAを取り出し、スーパーコンピューターなどを駆使して塩基配列と遺伝子の情報を高精度に解析した。得られたデータはアメリカンショートヘア種が持つ遺伝子の特徴をみる基盤となり、さらに数世代の追跡調査で種に特有な病気の情報を蓄積していく。結果は獣医師が閲覧できるデータベースに公開し、遺伝情報に基づくゲノム獣医療の確立につなげる。
 2019年の民間調査によると、アメリカンショートヘアは日本で2番目に多く飼育されている人気品種。他種との交配に使用されるため遺伝的に近縁な猫も多く、研究で得られるデータは幅広い猫に適用できる可能性があるという。猫には品種によって発生しやすい病気もあり、遺伝的な特徴から原因を突き止めれば種や個体に応じた効果的な治療の提供が期待できる。
 中村教授は今後、獣医師に連携を呼びかけて検査で得られる猫の血液から情報を蓄積するほか、他の品種のゲノム解析にも取り組む予定。人間を中心に研究が進むゲノム医療を猫に展開する動きは始まったばかりだが、「猫は1歳でも子供を産むので数世代の情報が数年で得られる。個人情報の問題もなく、今後10年ぐらいで実用化していきたい」と語る。

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