股関節の軟骨が減り、骨が変形してしまう「変形性股関節症」について、理学療法士の生友尚志さん(39)=兵庫県三田市=が、自宅でのマッサージによって痛みが改善するとした研究論文を発表し、英国の医学誌に掲載された。経過観察とされることも多い病気のため、生友さんは「悩んでいる人に知ってほしい」と話している。(小森有喜)変形性股関節症は、脚の付け根にある股関節が炎症を起こし、大腿(だいたい)骨の先端などの軟骨が減って骨が変形する病気。年齢を問わず発症するが、中高年では自覚症状がない人も含めて約15%が罹患(りかん)するとされる。多くの整形外科では、薬で痛みを和らげる、筋力を落とさないようトレーニングする-などの治療が一般的。結果的に経過観察となり、患者が痛みを我慢しているケースが多いという。東京大学の調査によると、股関節そのものに痛みがある人は全体の5%程度にすぎないという。一方、生友さんが勤務するクリニックの患者データでは、尻やももなど股関節の周辺に痛みがある人が7割以上。つまり、日常生活の中で股関節をかばうことにより、周りの筋肉に疲労が出ているケースが多いとみられる。今回の療法は、こうした筋肉の痛みを改善するものとして開発した。使うのは、米国でアスリートらのストレッチ器具として開発された筒状の「フォームローラー」。樹脂製のものが多く、自重で反発させることで体をマッサージする。ローラーを置き、股関節周辺の痛みや気持ちよさを感じる部位に当て、10センチ程度細かく前後に動きながらぐりぐりとマッサージする。1日5~10分程度が目安。ローラーは安いもので千円程度で手に入るという。生友さんは「テレビを見ながらでも1人で気軽にでき、気持ちよさを感じるので続けやすい」とする。生友さんは3年ほど前から治療にローラーを導入。効果を検証するため、ローラーを導入する以前の患者と導入後の患者ら計74人を比較した。痛みの強さを評価する数値は、前者が平均して2割弱しか下がらなかったのに対し、後者は3分の1にまで改善した。ローラーを使った人は約3カ月で効果が表れ、37人中34人が「股関節の痛みが大きく改善した」と回答した。生友さんは昨年、股関節治療に関する国内の学会で研究を発表し、今年9月に英国の査読付き医学誌「Physiotherapy Theory and Practice」に論文が掲載された。問い合わせは、生友さんが勤務する股関節専門の増原クリニック(大阪市北区)TEL06・6358・0200