脳卒中の後遺症などで読み書きや会話が不自由になる「失語症」の人らを対象に、専門のデイサービスを提供してきた一般社団法人「ことばの道」(神戸市須磨区北落合2)が来年4月、対象を幼児にまで広げた言語リハビリ専門の施設を同区高倉台6にオープンさせる。全国でも例がないといい、幅広い世代のコミュニケーションを支援する。(高田康夫)ことばの道は2008年にデイサービス施設をオープン。発音や脳の機能訓練などをする「言語リハビリ」に特化し、言語聴覚士が症状にあった訓練方法を用意する。利用者の年齢層が30~90代と幅広いのも特徴だ。失語症の人は全国で約50万人と推定されているが、言葉の障害だけのため、障害者手帳を申請していない人も多いという。高齢化の進展で失語症に悩む人も増えているとみられ、ことばの道のデイサービスも1日20人の定員は埋まって空き待ちの状況だ。そこで、新施設に移転してデイサービスの定員を増やすとともに、リハビリ後に働くことができる「就労継続支援B型」、言葉の遅れや発音が気になる幼児ら向けの「児童発達支援」、自閉症や友人とのコミュニケーションが取りにくい児童・生徒らが対象の「放課後等デイサービス」を併設した多機能型施設にすることにした。NPO法人日本失語症協議会(東京都)によると、言語リハビリに特化した施設は全国に10カ所ほどしかなく、多機能型は例がないという。就労支援B型では、折れたクレヨンを集め、さまざまな色を1本で出せるマーブルクレヨンを作る予定。新商品で発展途上国を支援する仕組みも検討している。言語聴覚士の安居和輝さん(32)は「高齢者の介護保険サービスをとりまとめるケアマネジャーのように、言葉の専門性を生かして学校や各施設が情報共有できるような役割も担っていきたい」と話す。