コロナで受診控え、重症化 自己判断せず相談を


「虫歯が悪化し歯の神経が壊死した」「食べ物が飲み込めなくなるまで我慢したら、食道がんだった」。新型コロナウイルスへの感染を恐れて受診を控えた結果、容体が悪化する患者が島根県内で出ている。死亡した患者がいたとの報告もある。新型コロナと症状が似ているインフルエンザが流行期を迎える中、受診控えが再び増える懸念があり、県内の医師らは、通院の中断や受診の見送りを患者自身が判断せず、相談してほしいと呼び掛けている。「10歳の息子の左頬が腫れている。助けて」8月中旬、浜田歯科医院(松江市砂子町)に悲痛な電話が入った。緊急治療すると、歯の神経が壊死し、虫歯の炎症が顎の骨まで広がる最も悪化した状態だった。男児は歯の表面のエナメル質がうまく作られず、虫歯になりやすい症状があったため同院で3、4カ月に1度、治療。2月以降はコロナ感染を恐れて通院しておらず、5月に歯の痛みが出たが、飲み薬で対処していた。浜田陽一郎院長は「コロナによって年少で一生使う歯を失った」と悔しさをにじませる。松江市内の内科医院では9月上旬、来院した60代男性に食道がんが見つかった。男性は春先から食べ物の飲み込みづらさを感じていたが受診をためらい、全く物が飲み込めない状態になってから来院した。この医院では4~6月の外来患者が大きく減り、普段の半分以下になる日も。50代の男性院長は「病院は来院を無理強いできない。冬になれば(コロナと症状が似ている)風邪の患者が増え、再び受診控えが起こる恐れがある」と懸念する。県内の開業医らでつくる県保険医協会が加盟する診療所などに行った調査で、5月の患者数が前年同期と比べ減ったとしたのは医科88%(152人)、歯科86%(44人)に上った。このうち減少幅が「11%以上」との回答は医科63%(96人)、歯科82%(36人)。8月の追加調査では、コロナで受診を控えた結果、重症化した患者が13医療機関で計58人確認された。中には、肺の疾患で通院していた80代男性が受診控えで重症化し、別の病院に入院した後に死亡した事例があった。同協会の岩田兼正会長は「不安な場合は電話相談でもいい。それぞれの医院で感染対策をしており、安心して受診してほしい」と呼び掛けた。

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