酵母の力で動脈硬化予防 新潟薬科大教授ら必須脂肪酸生成に成功


新潟市秋葉区の新潟薬科大応用生命科学部の高久洋暁(たかく・ひろあき)教授(49)らのチームが、青魚の魚油に多く含まれ、動脈硬化予防などの効果がある必須脂肪酸の一種を酵母から作ることに成功した。英科学誌ネイチャーで研究が紹介された。魚の乱獲防止につながることも期待され、高久教授は「(酵母を培養する)糖があれば世界中どこでも機能性油脂が作れる。健康食品をはじめ、幅広い用途で使ってほしい」と話している。 研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2016~20年度の5年計画で行う「スマートセルプロジェクト」の一環。高久教授が代表となり、長岡技術科学大(長岡市)や神戸大などの研究者と進めてきた。 作り出したのは、体外から摂取する必要がある必須脂肪酸の一つ、エイコサペンタエン酸(EPA)。厚生労働省が、魚介系由来のEPAとドコサヘキサエン酸(DHA)の1日の摂取量の目安を計1グラム以上と示すなど、各国で食事に取り入れることが推奨されている。近年は健康意識の高まりなどから、需要が爆発的に増加。魚が乱獲され、将来的に供給が間に合わなくなると懸念される。 チームは、魚油に含まれているEPAの起源が植物プランクトンである点に注目。油脂を作るのにたけている酵母に、植物プランクトンのEPA合成に必要な酵素遺伝子を複数導入したところ、酵母からEPAを生産できるようになった。 酵母に最適な酵素を探す作業では、薬科大などが集めたビッグデータを活用して効率的に進め、EPA含有率を魚油の30%に対し、目標値の10%まで高めることに成功した=図参照=。 NEDOでの研究は本年度で終了するが、高久教授は企業などと研究を続ける。魚油は臭みを取る処理が必要だが、酵母で作った油脂は無臭。処理をせずに健康食品としてジュースに加えることなどが想定されるという。 ネイチャーには世界的な認知度向上を目指す研究をまとめて紹介する広告特集として、8月号の電子版と冊子に掲載された。高久教授は「ビッグデータを使うことで10年かかる研究が2年でできた。組み込む遺伝子を変えることで用途に応じた油脂も作ることも可能だ」と展望を語った。

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