特養で不適切ケア 入浴週1回、無資格で「胃ろう」処置 神戸


神戸市灘区の特別養護老人ホーム「きしろ荘」で、長期間にわたって入所者を週1回程度の入浴しかさせず、資格のない職員が入所者の胃にチューブで栄養や薬を補給する「胃ろう」などの処置をしていたことが分かった。このほか、昨年1年間は介護に必要なケアプランを作成しておらず、神戸新聞社の取材に男性施設長は「やってはいけないことだと分かっていたが、人手が足りなかった」と謝罪している。(中部 剛、上杉順子)厚生労働省の福祉施設運営基準で特別養護老人ホームでの入浴回数は「週2回以上」と定められているが、「きしろ荘」では数年前からこの基準を下回っており、今年7月ごろまでの1年は2週間に1回程度のこともあったという。特養は介護保険法に基づき、介護支援専門員が入所者の支援内容を定めるケアプランを作成しなければならない。しかし、昨年1年間、全入所者約50人分が作られていなかった。今年も未作成の状態が続いていたため、5月ごろ、同じ法人内で他施設に勤務する職員に指示し、すべて作成。その中には介護支援専門員でない人もいたという。「胃ろう」は医療行為にあたり、きしろ荘でも通常は看護職員が担当。職員退職に伴い、昨春から今年8月ごろまでは入所者8人に対し資格のない施設長が対応していた。特に今春までは日常的に行っていたという。資格のない職員による「たん吸引」も容認していた。無資格による胃ろう、たん吸引は医師法に抵触する可能性がある。入所者は要介護度が高く、家族を含めて苦情などの指摘はなく、施設長は「悪いと思っていたが人手不足で改善できなかった」とする。施設長自身もこの数年間、休みが取れない状況で、兵庫県内に新型コロナウイルスの感染が拡大した3月以降は、自宅に帰っていない。現在は約50人いた入所者を減らし、不適切な状態は解消しているという。神戸市福祉局監査指導部は「調査しているともしていないとも言えない」とコメントするが、運営する社会福祉法人「六甲鶴寿園」(岸本圭子理事長)は、市が調査に入っていることを認めている。施設長は「人手不足でケアの態勢が整っていないことを法人に言いだせなかった」と釈明しており、市は、運営法人の体質も背景要因の一つとして注目しているとみられる。神戸新聞社の取材に対し、六甲鶴寿園の役員は「市の監査なども入っており、応じられないと理事長が言っている」としている。

関連記事

ページ上部へ戻る