視覚障害者のICT支援 「仲間の刺激になれば」 自立して社会貢献を目指す若い女性の視覚障害者に贈られる第18回サフラン賞に、点字楽譜(点譜)のデータベース化や、日本点字図書館職員として障害者のICT(情報通信技術)支援に取り組んでいる高知市春野町出身の上田喬子さん(33)=東京都調布市=が選ばれた。上田さんは「一つずつ積み重ねたことが認められ、家族や関係者に感謝したい」と喜びをかみしめている。 サフラン賞は視覚障害者支援総合センター(杉並区)が主催。視覚障害の当事者で、文化向上や福祉増進に寄与している30代以下の女性をたたえている。 上田さんは春野東小学校に通っていた10歳ごろから、緑内障による視覚障害が進行し、15歳ごろに両目を失明。桐朋学園大学音楽学部(声楽)に進み、在学時は「自分でやれることを増やそう」と障害者向けパソコン教室に通い、スマートフォンの使い方などを学んだ。間もなく教室で教える立場になったという。 「スマホやパソコンが使えると誰かの視力を借りなくても、行きたいコンサートを調べたり、家に届いた手紙を読み上げさせたりできる。生活の幅が一気に広がるんです」 現在は日本点字図書館(新宿区)の職員として点字指導に加え、ICTを使った生活支援に携わる。 声楽家でもある上田さんは、音楽仲間と演奏会を開くだけでなく、全国組織の点字楽譜利用連絡会(日本点字図書館内に事務局)の運営委員として点譜のデータベース化と相互利用を進めている。 「出版されている点字楽譜は非常に少なく、貴重。失明した音楽家もいる。リストを共有することで、より多くの人に音楽を楽しんでもらえる」。サフラン賞の選考では、ラジオにIT講師として出演するなど、視覚障害者の生活向上へ積極的に活動している点も評価された。 受賞が決まり、上田さんは「好奇心が赴くままに人生を歩んできた。今後も自分の人生を楽しみながら、人生を切り開いて、同じような立場の仲間への刺激になればうれしい」と笑顔で語った。(安岡仁司)