兵庫県姫路市の高岡病院(精神科)に、子どもの精神疾患に対応する「児童思春期病棟(30床)」ができた。子どもの「心の病」は増加傾向だが、入院設備を備えた児童精神科病院は県内でも数少ない。不登校、うつ病、ゲーム依存、強迫性障害、摂食障害、PTSDなどの小中学生らに対し、医師、看護師、臨床心理士らのチームが一人一人の背景を探り治療を続ける。同病院の中島玲医師や医療スタッフに取り組みなどを聞いた。(中部 剛)■不足する専門医近年、児童精神科への注目度は高い。昨年、高岡病院への中学生以下の新規患者は年間240人に達し、再診を含めた受診者は延べ3千人。予約は1~2カ月待ちの状態で、一時は予約受け付けを停止していたほどだ。半年から1年待ちという病院もあるという。こんなデータがある。文部科学省によると、特別支援学級に在籍する2018年の「自閉症・情緒障害」は約12万3千人と全在籍者数の5割弱。08年と比べると、「自閉症・情緒障害」は2・8倍に上る。厚生労働省のデータでも24歳以下の精神疾患の患者数は36・8万人(14年)で、1999年のほぼ2倍。だが、専門医は不足しているという。児童精神科の医療スタッフは、院内の治療だけでなく、学校や行政、福祉関係者らとの連携が必要となり、負担は大きい。■イメージは「家族」高岡病院では2007年から児童精神科外来に取り組んでいるが、ニーズの高まりから新病棟建設に着手。6月から運用している。新しい病棟は、木目調で天井には大きな葉の模様。ハワイの言葉で「家族」を意味する「OHANA」と名付けられた。30床の個室に院内学級、ラウンジ。緑色をたっぷりあしらったデイルームがあり、病院というイメージではない。学校でのトラブルや不登校、家庭内暴力などで、家族と暮らしていくことが困難になった子どもたちが入院する。リストカットや大量の服薬経験のある子どももいる。医師、看護師、ケースワーカー、心理士らのチームで対応していく。子どもたちに寄り添い、頑張るべき場面では背中を押す。病棟の浅田雅子看護課長は「一人一人に、温かな医療や福祉を提供していきたい」と話す。■早期発見が重要入院は、1週間で終わる患者もいるが、1年を超えるケースも。中島医師は「個々の発達状況や特性に合わせて退院に向けた計画を立てる」と話す。例えば、家庭内暴力で児童が入院すると、なぜ、暴力という表現に至ったのか、面接や日常生活の行動観察、成育歴の聞き取り、発達検査、心理検査を組み込んで背景を分析する。中島医師は「感情をうまく言葉に出せず、暴力につながってしまうことがある。感情を言葉にすることができるようになれば、学校や家庭生活が変わってくる。気持ちのクールダウンの方法も教える」。入院中、母親ら家族へのサポートも重視する。また、発達障害などを早期に見つけだすことで、不登校、暴力行為、うつといった2次障害が予防ができるといい、中島医師は「1歳6カ月児健診や3歳児健診の精度を上げていくことが重要」と指摘している。