岡山大大学院の平木隆夫准教授(放射線科)らの研究グループは、がんの検査や治療のため独自に開発した医療ロボットの実用化に向け、臨床試験(治験)に乗り出す。20日から患者の募集を開始。有効性や安全性を確かめ、4~5年後の製品化を目指す。 岡山大病院で計画している治験では、肝臓がんの治療を5人、病理検査用に組織の一部を採取する「生検」を22人に行う。平木准教授ら放射線科医3人がロボットを操り、医師が直接行う治療や検査と比べて遜色がないかを検証する。2022年3月末までに治験を終え、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に医療機器としての承認を申請する。 ロボットは、アームの先端に取り付けた針でがん組織を凍らせたり、焼き切ったりするほか、生検にも使える。岡山大の工学部と医学部が連携して12年1月に開発を始め、18年中に同病院でヒトへの初の臨床試験として10人に生検を行い、いずれも成功している。 針を使った治療や検査は、医師が患者のそばでコンピューター断層撮影(CT)の画像をリアルタイムで見ながら行うため、医療被ばくが生じる。だが、ロボットを遠隔操作すれば被ばくはゼロとなり、手ぶれも生じない。操作はボタンを押すなどシンプルで、医師の技量に左右されることもないという。 ロボットは完成後、共同開発者で同大大学院の亀川哲志准教授(ロボット工学)と松野隆幸准教授(同)らが、緊急時に針をアームから外す安全装置などの改良を重ねてきた。平木准教授は「治験を無事に終わらせ、岡山大発の医療ロボットの実用化につなげたい」と話している。