物資不足、手作りで補う 緊急時は人員も余裕なし


島根県西部で最多の28診療科を持つ浜田医療センター(浜田市浅井町)。松江、出雲両市で新型コロナウイルスの感染者が相次ぎ確認された4、5月、西部の中核病院も大きな緊張感に包まれていた。「医療品は使い捨てが基本。入荷の見通しが分からず不安の連続だった」。同センターの感染管理を担当する渡辺正美副看護師長(46)が、医療用マスクやガウンの在庫が底を突きかけた当時を振り返る。4月に全国で感染が一気に広がり、県内では東部で5月上旬までに計24人の感染を確認した。県西部でも、発熱症状や行動歴から「感染の疑いがある人」が連日のように出ていた。PCR検査用の検体採取や救急に当たるスタッフは、患者が感染していることを前提に、完全防護できる医療装備が必要だった。ところが、医療用物資は不足。感染者を直接診ていた県東部に優先的に回っていたという。同センターは手術や検査用の各種ガウンの在庫が残り1~2週間分まで減少。苦肉の策で講じた一つが、看護師などがビニールのごみ袋を加工した手作りの代替ガウンだった。インターネットの動画を参考にし、一般入院患者を看護する場合など、感染症のリスクが低い場面で使っている。■感染者の受け入れを巡っても、県内8病院、計30床しかない感染症指定医療機関の一つとして、緊張が途切れることはなかった。「西部でお願いできないか」-。松江市内でのクラスター(集団感染)で感染者の確認が続いた大型連休前、主要医療機関を交えた島根県広域入院調整本部のウェブ会議で、東部の感染患者を同センターに送る案が浮上。結果的に受け入れには至らなかったが、調整の難航ぶりを感じていた平(ひら)和宏事務部長(54)は「とにかく情報が錯綜(さくそう)し、私たちも対応に追われた」と話す。センターは計365床の一部で感染者の受け入れ態勢を取っていた。感染症専用病床(4床)に患者が入院した場合、院内感染を防ぐため、同じ病棟にある一般病床(47床)の患者をすぐに別の病棟に移せるよう一般病床の稼働を20床以下に抑制。場合によっては、空いた一般病床への感染患者受け入れも想定していた。物資不足も踏まえ、早期がんなど緊急性の低い手術や検査は先送りするなど通常診療に一定の制限をかけて何とか乗り切った。■一方、全国で再び感染者が急増する中、足元で集団感染が起きる恐れは決して小さくない。県は現在、病床約250床に加え、軽症者や無症状の人を受け入れる宿泊療養施設3施設も確保している。実際の受け入れには内科医など多数の医療スタッフが不可欠で、関係者の中には、医療機関同士で従事者を融通し合う方法もあるとの意見が聞かれる。ただ、飯田博院長(63)は緊急時には各機関とも人員に余裕があるとは考えにくいと指摘。もともと医師不足が深刻で、医療基盤が脆弱(ぜいじゃく)な県西部の状況に触れ「新型コロナに対処しながら、救急をはじめとする他の医療提供態勢も維持する仕組みを整えないといけない」と提起する。

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