新感染症備え職員強化 新型コロナ5類移行1年、認定看護師増へ


新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に引き下げられ、8日で1年となる。県民生活はコロナ禍前の日常を徐々に取り戻し、インバウンド(訪日客)を含む観光客も回復基調になるなど県内を覆った影は消えつつある。一方、行政や医療の現場では、コロナ禍の経験や教訓を踏まえ、新たな感染症への準備が進み出している。「感染症対策で困ったときに役に立てるようになりたい」。大型連休を控えた4月25日、竹田綜合病院(会津若松市)には感染管理認定看護師の実習に臨む看護師高崎順子さん(49)の姿があった。感染症対策の知識を持つ認定看護師は、医療機関での感染症患者受け入れや院内感染防止などの役割が期待される。勤務するいわき市の病院でクラスター(感染者集団)が発生した際、ほかの病院から応援に入った認定看護師の活動を目の当たりにした。それだけに「適切な対応で患者とその家族を守れるようになりたい」と意気込む。県は、新たな感染症に対応するため、現在40人いる認定看護師を2030年度までに62人以上にする目標を掲げる。昨年度、東北初となる教育課程を星総合病院高度専門教育センター(郡山市)に開設。県内外の看護師17人が受講しており、7月には課程が修了する。10月には日本看護協会の認定審査を受ける予定で、修了生のネットワークづくりも検討している。災害時の体制整備認定看護師だけでなく、感染症に対応する人材の育成に向けて県看護協会は、4月から感染症発生時にも派遣可能となった「災害支援ナース」の育成に取り組む。コロナ禍を踏まえ、災害時の看護業務に加えて、養成研修プログラムに感染拡大時の院内のゾーニングなどが組み込まれた。現在、県内に約160人いる災害支援ナースを増やすことで、感染症も含めたさまざまな状況に対応できる体制を整えたい考えだ。行政と医療施設との連携体制の構築も進む。県は9月をめどに、病院や診療所、薬局、訪問看護事業所といった医療施設と感染症拡大時の病床確保や外来対応、後方支援などについての協定を結ぶ計画だ。県内には2000を超える施設があり、協定を通じて新たな感染症流行時の迅速な対応につなげたい考えで、各医師会などとも協力し、協定締結施設の確保を進める。(報道部・矢島琢也)保健所以外の職員も研修コロナ禍で多忙を極めた保健所なども次の感染症に備える。福島市保健所では、他部署から多くの職員派遣を受けた経験などから3月、新たな感染症予防計画を策定した。感染症流行時に必要となる人員を明記、保健所以外の職員も感染症に関する研修・訓練を年1回以上行い、知識を身に付けるという目標も掲げた。新たな感染症がいつ再び流行するかは分からない。市保健所の千葉浩明感染症・疾病対策課長(53)は「計画に基づいて具体的に対策を進める必要がある」とした上で「感染症に強いまちづくりには、市民の協力は欠かせない」と官民一体で備えを継続していく重要性を訴える。

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