嚥下障害診断、AIが補助 福島医大と会津大の研究チーム開発 内視鏡映像を解析


福島県の福島医大医学部耳鼻咽喉科学講座の今泉光雅准教授(46)と、会津大情報システム学部門の朱欣(しゅ・きん)上級准教授(46)らでつくる研究チームは、患者の喉付近を写した内視鏡の映像を人工知能(AI)が解析し、器官などに色を付けて医師の診断を補助するシステムを開発した。飲食物を上手に飲み込めない「嚥下(えんげ)障害」が疑われる患者の診療に使い、誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」などの迅速な把握や的確な治療につなげる。将来的には県内の医院で活用し、地域医療の充実につなげる。福島医大が21日、発表した。ゼリーなどの検査食を飲み込んで検査する。声帯や気管は赤色、気管の入り口にある「喉頭」は青色、ゼリーなどの検査食は緑色で表示する。本来は飲食物が入らない赤色と青色の部分に検査食の侵入がないかを視覚的に確認できる。今泉准教授によると、嚥下障害の内視鏡検査は治療方針を決める重要な役割がある。ただ、医師の知識や経験によって診断に差が出る場合があり、システム導入で医療技術の標準化が進むと期待できるという。研究チームは、2016年から2019年までに嚥下障害の疑いで福島医大付属病院を受診した患者延べ200人のデータをAIに学習させた。喉頭への侵入や誤嚥の状況を評価し、福島医大の専門医2人の見解と比較した結果、同程度の精度を確認した。若手医師がシステムを活用した場合、統計学的に良い効果が得られることも明らかにした。日本嚥下医学会評議員を務める熊井良彦長崎大大学院耳鼻咽喉・頭頸部外科教授(53)は「とても画期的な取り組みだ」と受け止める。システムの処理速度の向上などが今後の課題だ。朱上級准教授は「診断までを全自動でできるように改良を重ねたい」と語った。飲み込む力や気管に入った異物を吐き出す力が弱くなっている高齢者は、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高いとされる。厚生労働省の人口動態統計によると、県内では昨年1年間で738人が命を落とした。研究成果は昨年12月に英国科学誌「Scientific Reports」の電子版に掲載された。

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