建設着工から4年を経て、山形大医学部が最先端の重粒子線がん治療施設として整備を進める「東日本重粒子センター」(山形市飯田西2)は、2021年2月に開業予定。患者に対し、どの角度からでも患部により正確に照射して負担を減らせる最新鋭の装置を配備したことが最大の特徴だ。重粒子線治療施設の次世代型“山形モデル”として、先端医療技術を世界に発信する。【的野暁】重粒子線がん治療は外部放射線治療の一つで、患者の体にメスを入れず、患部に直接重粒子線を照射してがん細胞を破壊する。センターは、17年4月に建設に着工し、総工費は約150億円。国が約70億円、自治体が計約30億円を補助している。国内に同治療施設は6カ所あるが、北海道・東北地方では初。一番の特徴は、360度最適な角度から照射ができる治療装置「回転ガントリー」。患者は、天井を向いてあおむけの楽な姿勢で治療を受けられる。機器は世界3台目で、直径約6メートルの世界最小。国内で唯一、回転ガントリーがある千葉県の同様の施設(120メートル×65メートル)に比べ、約4分の1の45メートル四方に収容でき、付属病院と渡り廊下での接続が可能になった。寝たきりの入院患者も安全に移動できる他、受け付けから会計まで院内で完結できる利点がある。また、従来の治療は、患者への照射量を調節するために、最大約1週間かけてプラスチック製などの障害物を製作して実施していたが、山形の装置は0・5ミリ単位で照射量を調整できる最新技術で、年間約1億円の廃棄物の削減につながる。従来は広く浅く照射され、出血や皮膚炎などの副作用があったが、山形の装置は狙った部位に正確に照射でき、患者への負担が減る。回転ガントリーの治療は、来年7月に受け付けを開始し、同8月から稼働する予定。治療装置はこの他、主に前立腺がんを水平方向から治療する「固定式」もある。回転ガントリーより先の今年9月から同大付属病院の前立腺がん患者から受け付けを始め、同11月から院外の予約も受け付ける。半年間ホルモン薬治療を実施後、照射治療を行うという。16年には手術が難しい骨軟部腫瘍が保険適用となり、18年からは患者数が多い前立腺がんなどにも同適用が拡大。同大は今後、患者の保険適用外の治療費(314万円)の補助を県や市町村に依頼する方針だという。根本建二センター長は「(重粒子線治療で)骨肉腫は7割程度完治しており、これまで東北で治療を諦めていた患者を救うことができる」と説明する。