医療スタートアップのメドリング(東京・文京)は10月中に、ベトナム・ハノイに診療所を開設する。自社で開発したクラウド型電子カルテなどIT(情報技術)を活用して質の高い医療サービスの提供を目指す。5年後に100施設を目指して多店舗展開を進める考えだ。ハノイにあるイオンモールの店内に診療所「METiC(メティック)」を開く。現地の医師や看護師を採用し、小児科や生活習慣病の診療を行う。診療の単価は日本円で1回5000円程度を想定し、まずは世帯年収が300万円以上の富裕層を主な利用者と見込む。メドリングの安部一真代表は「ベトナムの人口は1億人近くで増加が続いているが、医師の数や初期の診察を行う診療所の整備が追いついていない」と話す。ITを生かしたスマート診療所の経営が軌道に乗れば、診療所を増やし幅広い人に医療を届ける考え。将来的には日本の医師と現地ベトナムの医師や患者をオンラインでつなぎ、遠隔で診療を助ける仕組みを目指す。さらに、電子カルテに集積させた情報を活用して診療を支援するAIシステムも開発するという。ハノイに開業する1施設目に続き、2021年には他のイオンモール店内などで5施設ほどを開業する計画。安部代表は「日本の製品や医療は品質が高いと現地で認知されており、日本式の医療サービスを提供する診療所として知ってもらいたい」と話す。数年後にはベトナム以外の東南アジア各国にも進出するほか、将来的には運営システムなどを日本に逆輸入することも視野に入れる。メドリングの取り組みは日本貿易振興機構(ジェトロ)が東南アジアでのデジタル活用を促進する支援事業に採択された。経費の一部をジェトロが支援する。現地では医療関連事業を手掛けるジャパン・ベトナム・ヘルス・ブリッジ(ハノイ)と連携して職員の採用などを進める。