新型コロナで髄膜炎の男性、副鼻腔炎も 山梨大が国際学会に論文


新型コロナウイルスに感染し、髄膜炎を発症して山梨大付属病院(山梨県中央市)に入院している20代会社員男性の症例報告論文が4日、国際感染症学会(米マサチューセッツ州)のホームページに速報版として掲載された。男性が重い副鼻腔炎も起こしていたことや、新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の投与は10日間だったことなどが明らかになった。論文によると、男性は24歳で海外渡航歴はない。2月27日に頭痛、全身倦怠感、発熱があり、28日に近くの医療機関を受診。インフルエンザの検査は陰性だったが、医師は抗インフルエンザ薬のラニナミビル(商品名・イナビル)と解熱剤を処方した。症状が悪化し、頭痛やのどの痛みがあったため3月2日に別の医療機関を受診。胸のエックス線検査や血液検査を受けたが異常がないとされた。6日、男性は1人暮らしの部屋で倒れているのを家族に発見され、救急車で運ばれた。搬送中、約1分間全身発作を起こした。山梨大病院に着いたときには言葉を発せず、痛みに対する反応がなく、首の後ろが硬直していた。胸のコンピューター断層撮影(CT)検査では肺に小さな濁りが見られた。髄膜炎などが疑われたため、集中治療室(ICU)でセフェム系抗生物質セフトリアキソンやグリコペプチド系抗生物質バンコマイシン、抗ヘルペス薬アシクロビル、ステロイドの点滴を行った。救急医の判断で新型コロナのPCR検査を行ったところ鼻の奥は陰性だったが、脳脊髄液から陽性反応が出た。このためすぐに、新型コロナへの効果が期待されているファビピラビル(商品名・アビガン)の投与を始めた。錠剤のため、水に溶かしたものをチューブで鼻から胃に流し込み、10日間投与した。男性は重い副鼻腔炎も起こしていた。新型コロナで嗅覚が失われる事例があるのは、鼻の奥の嗅上皮と呼ばれる部分が影響を受けているためとされ、論文は「新型コロナの診断や治療では鼻や副鼻腔の状態に注意する必要がある」としている。論文の責任著者である山梨大の島田真路学長は「新型コロナは肺炎だけでなく髄膜炎も起こすことを世界で初めて報告した論文だ。意識障害やけいれんで救急搬送された患者の髄液をPCR検査することが重要だ」と話している。男性は現在は回復し、数日中に退院してリハビリに移行するという。

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