厚生労働省は2021年度、全国の基幹病院などが、病気の種類や症状ごとに使用する薬の優先順位を定める「推奨リスト」を作成するよう支援に乗り出す。22年度末までに、リストを作る際の手順を示した指針を策定する。病院ごとの処方の偏りや無駄を改め、先発品より値段が安い後発品の処方を促すことで、医療の質向上と医療費の抑制につなげたい考え。リストは、基幹病院などがそれぞれに、薬の効果や安全性、関係する医学会の診療ガイドライン、値段などのデータを分析して作成する。例えば、効果や安全性が同じとみられる複数の薬がある場合、安価な後発薬を優先して使うことなどをルール化する。厚労省が策定する指針は、リスト作成時、基幹病院などが直面する課題の解決を手助けするもの。薬剤師と医師らが連携して作業を進める際の手順や、薬の優先順位を決める際に必要となるデータの種類などを具体的に示す。健康保険組合連合会は19年8月にまとめた調査研究で、全国でリストに基づき生活習慣病の代表的な先発薬を後発薬に切り替えると、年3000億円以上の薬剤費を削減できると推計している。これまでにも、聖マリアンナ医大病院(神奈川県)が糖尿病や骨粗しょう症の治療薬、浜松医大病院(静岡県)がインフルエンザ治療薬や抗菌薬の処方でリストを作成し、効果をあげている。20年度の診療報酬改定に向けた議論で、厚労省はリストを作成した医療機関の報酬を手厚くすることを検討したが、医師会などから処方の幅が狭まるなどと反発を受け、見送られた経緯がある。