医療DXに薬局薬剤師の役割大


2020年初頭からほぼ3年以上続いた新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、人から人への感染を防ぐために取られた非接触・リモートへの対応がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を加速させた。特に医療関連分野では、当初、国家戦略特区を活用して主に離島や山間僻地などに限った取り組みが進められていたオンライン診療や服薬指導などが、コロナ禍を経て、かなり身近なものになった印象がある。オンライン等による受診から服薬指導、薬剤の配送までの一気通貫型の仕組みの整備に向けた取り組みも進んでいる。先日、宅配代行サービス業者のウーバーイーツジャパンが一部の処方箋医薬品に関して、調剤薬局を運営する複数企業の薬局から自宅までのラストワンマイル配達の提供を開始することを発表した。ドラッグストアで販売されているOTC医薬品を含む店頭販売商品を、宅配代行業者を通じて届けるケースはこれまでも存在した。非接触の環境が緩和されつつある中で、処方薬の配送代行が患者や薬局側のニーズに合致するのか、今後の推移に注目したいところだ。一方、医療DX推進に伴い、個人の健康情報を総合的に収集、一元的に保存管理する手法として活用されつつあるのがPHR(パーソナルヘルスレコード)だ。生活習慣病の予防や、罹患後も測定数値の把握により、日常生活改善などセルフコントロールにも役立てることが可能となる。個人データを管理し、医療機関や薬局に提供することで適正な治療や服薬指導につながる可能性も期待される。現在、自治体などと連携してPHRサービスを提供する企業も少なくはない。こうした中、4月に日本糖尿病学会が血糖測定機能を謳ったスマートウォッチ(腕時計型デバイス)に対し、「現在、指先穿刺や皮下センサー留置のための皮膚穿刺をすることなく、血糖値やグルコース値を測定できる医療機器はない」と注意喚起するコメントを発表し、注目された。米国食品医薬品局(FDA)が血糖値の測定にスマートウォッチやスマートリングを使用しないよう消費者に警告したことを受けての対応のようだ。確かにインターネット上で「血糖値モニタリング」と検索すると、当該製品の広告が表示されるが、医療機器の表示はない。どちらか言えば、景品表示法の優良誤認への該当のほうが近い。医療DX推進過程では、このように分かりにくい事例もある。現在、全国各地の薬剤師会では、デジタル庁がマイナンバーカードの健康保険証の利用促進を行うためのデジタル推進委員任命が進んでいる。健康情報の窓口である薬局薬剤師がデジタル機器やサービスに不慣れな人をサポートする立場となり、適正な医療DXの推進に寄与していくことを期待したい。

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