日本サッカー協会が幼児期から15歳までのヘディング指導について初の指針を承認した。頭部への悪影響を懸念し、年代ごとに制限を盛り込んだ。認知症の関連を指摘する英国の研究などを受けて策定したものだが、子どもたちへの指導のあり方などが課題となりそうだ。英グラスゴー大は2019年、サッカーの元プロ選手はアルツハイマー病などの疾患による死亡率が一般人の約3.5倍との研究結果を発表した。ヘディングと認知症の関連を指摘する声は根強くある。ヘディングの衝撃だけでなく、競り合いで相手の頭部や肘が当たったり、着地失敗で頭を打ったりする危険性もある。名手ボビー・チャールトン氏らが認知症を発症した事例もあり、イングランド協会は20年2月に、11歳以下はヘディング練習を原則禁止とする指針を発表した。同6月には欧州連盟がユース年代で練習を制限し、日本協会も今月13日の理事会で指針を承認し追随した格好だ。日本協会は一律禁止はせず、段階的な指導を奨励する。幼児期は風船などで距離感や額に当てる感覚を養う。小学校1、2年生は軽量のゴムボールなども用いた遊び感覚を重視。中学年からヘディング練習を導入するが、まだバレーボールなど軽いボールを使う。5、6年生で徐々にサッカーボールを使用し、中学生には首や体幹の強化を勧めている。過去には至近距離からボールをぶつける危険な指導もあり、日本協会の中山雅雄・技術委員会普及部会長は「指導者のリスク感度を上げたい。知識がないと強制的にやらせてしまう」と語り、子どもたちを守る意識を強調した。心配されるのはヘディング技術の低下だ。体格面で劣る日本の苦手分野で、足元のテクニックを偏重する風潮からアジアでも後手に回る。元日本代表DFの中沢佑二さんは「ヘディングは技術。タイミングや感覚を養う練習をしないとうまくならない」と指摘する。中山部会長はトップ選手への聞き取りで「高校、大学から練習すれば習得できる」との証言を得たが、同時に「この指針で日本はヘディングが下手になったと言われたら、変えないと」とも漏らす。空中戦は競技の魅力でもあり、現時点でルール改定の動きはない。ヘディング技術の未熟な選手は競り合いでの危険性が高まるため、練習は積まなくてはならない。小中学生では過度な反復を避けても、空間認知能力の向上や受け身の習得などを正しく指導できるかどうかが問われそうだ。〔共同〕