失語症支援者派遣、コロナ禍で足踏み 松江


新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、松江市が計画する失語症者への支援者派遣にめどが立たない状況が続いている。市が昨年、県内で初めて「意思疎通支援者」の養成に乗りだし、派遣によって失語症者の社会参加につながるとの期待感が大きい事業だけに、家族からは早期開始を願う声が高まっている。失語症は脳卒中などによる大脳の言語中枢の損傷が原因で、読解や記述が困難になる症状。市内では年間120人ほどの発症者がいるとされ、市が昨年、失語症者の日常生活に付き添いながら意思疎通を補助する役割を担う支援者を養成する取り組みを始めた。昨年8~11月の講座では市民10人が言語聴覚士による講義や失語症者との対話など計40時間のカリキュラムを修了し、意思疎通支援者に認定された。市は双方の関係構築のため、2021年度に失語症者のサロンで交流を行い、22年度からの個別派遣を想定していた。しかし、感染拡大の影響でサロンの活動自粛が続き、ワクチン接種の時期も見通せないことから、少なくとも数カ月は身動きが取れない状況が続くとみられる。市には失語症者の家族から早期派遣を求める声が寄せられており、脳梗塞で02年に失語症となった田中達男さん(77)=松江市奥谷町=を支える妻の喜子さん(74)は「外出しやすい環境づくりへの第一歩となるだけに、やるせない。一刻も早く実施されて軌道に乗ってほしい」と切実な声を上げる。市が事業委託する山陰言語聴覚士協会(竹内茂伸会長)によると、失語症は全国的に認知度が低く、社会的な理解が進んでいないため、患者が自宅に閉じこもりがちになるケースが多い。竹内会長は「派遣できてこそ、社会の理解浸透につながる」と述べ、市と協議しながら早期開始を目指す考えを示した。

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