心臓から肺に血液を送る肺動脈が狭くなる難病「肺高血圧症」が悪化する仕組みを、国立循環器病研究センターのグループが解明した。体外から入った化学物質の分解にかかわるたんぱく質の働きが強まっていた。新たな治療法の開発につながる可能性がある。米科学アカデミー紀要に9日発表した。肺高血圧症は、肺動脈が狭くなったりふさがったりして異常に血圧が高まり、心不全につながることもある難病だ。治療薬はあるものの、あまり効かず悪化することがあり、新たな治療法が求められている。肺高血圧症の原因はよくわかっていないが、潰瘍(かいよう)性大腸炎患者が漢方薬の「青黛(せいたい)」を使った後に発病するケースがあるなど、化学物質が発病にかかわる可能性が指摘されてきた。そこで、グループは、体外から取り込まれる化学物質の解毒の仕組みにかかわるたんぱく質AHRに注目した。肺高血圧症の患者の血液を調べたところ、健康な人よりAHRの働きが高く、重症の患者はより高い傾向がわかった。ラットにAHRの働きを強める物質を与えると、重症の肺高血圧症と似た症状になることもわかった。遺伝子操作でラットのAHRの働きを止めると、化学物質を与えても病気が進まないことなども確認した。グループはこうした結果から、血液中のAHRの働きを調べることで重症化リスクを推定したり、AHRの働きを抑えることで治療したりできる可能性があるとしている。同センター研究所の中岡良和部長は「根本的な治療法開発につながる可能性がある」と期待している。(瀬川茂子)