三重大付属病院(三重県津市)は17日、1人の麻酔科医が同時に複数の患者を担当する「並列麻酔」の手術中、1人の患者の容体が急変し、死亡する医療事故があったと発表した。事故が起きたのは平成29年夏という。日本麻酔科学会は並列麻酔について「望ましいことではない」としている。遺族は事故の公表を望んだが、同病院は「明らかに誤った医療行為に起因していない」として公表しなかった。事故を受け、外部委員3人を含む院内の調査チームが患者の死因を調べたが特定できなかったという。ただ、事故調は並列麻酔で手術をしていたことが事故の遠因になったと指摘。当日は最大4人の患者を1人の麻酔科医が担当し、手術が行われたという。この日、医療安全管理担当の兼児敏浩副院長らが同病院で記者会見し「麻酔科医は容体が急変する約30分前から患者に張り付いていた。急変に気付かず、患者が亡くなったわけではない」と強調した。事故調が死因を特定せず「明らかに誤った医療行為」も認められなかったため、事故を公表しなかったという。兼児副院長は「遺族は最終的に我々の考えに納得してくれた」と説明した。一方、事故から3年半余りが経過して発表した理由について兼児副病院長は、報道機関からこの事故に関する公文書開示請求の申し出があったことを理由に挙げた。兼児副院長は「今考えても公表に迷う事例」としつつ、今後はケース・バイ・ケースで医療事故を発表していく考えを示した。兼児副院長によると、同病院の手術全体における並列麻酔の割合は30年が19%、令和元年が12%、昨年は20%以上という。臨床麻酔部長だった元教授、亀井政孝被告(54)=第三者供賄罪で起訴=を巡る汚職事件を受け、院内の麻酔科医が4分の1にまで減少したが、現在は外科系医師が協力し、手術中は必ず麻酔科医2人体制を確保した上で並列麻酔を禁止した。死亡事故が起きながら並列麻酔を禁止せず、麻酔科医が大量に減った現状で禁止したことについて、兼児副院長は現在の状況を「非常事態」と強調。汚職事件以前より手術件数を15%ほど減らし、外科からの協力があってなんとか成立している状態と説明した。