最期は自宅で 希望者9割不搬送 救急隊の苦悩も解消 東京消防庁


自宅での最期を望む末期がん患者らへの心肺蘇生(そせい)を中止し、病院へ搬送せず家族らに対応を引き継ぐ制度(DNAR)をめぐり、東京消防庁が令和元年12月に運用を始めてから1年間で約9割が希望通り不搬送となったことが3日、分かった。希望件数は月約10件ペースで多くはないものの、これまで救命の使命と延命措置を望まない家族らとのはざまで対応に苦慮してきた救急隊は、導入の効果を実感している。(松崎翼)東京消防庁が導入したDNARは、安心できる自宅で最期を迎えたいという末期がん患者らに応えるため、蘇生措置や救急搬送を行わない対応。自宅に駆けつけた救急隊は心肺蘇生の開始後、家族らから本人の意思を確認し、かかりつけ医の指示を受けて最終的に対応を決める。運用は自発的に要望が出た場合に限り、救急隊側が主導することはしない。東京消防庁によると、元年12月16日のDNAR導入から昨年12月10日までの約1年間で計112件に対応。このうち、希望通り不搬送となったのは97件だった。一方、不搬送を希望しても、救急隊が病院に搬送したケースは15件あった。患者が心肺停止状態でなかったり、かかりつけ医に連絡がつかなかったりしたことが理由だったという。心肺蘇生を実施して一刻も早く医療機関に搬送することが救急隊の使命。DNAR運用開始までは、家族らが延命を拒んでも蘇生措置を続行せざるを得えなかった。東京消防庁救急管理課の鈴木翔平消防司令補は「救急隊は患者を助けたいという思いでも、現場で『やめてくれ』といわれることは少なくなく、かなり負担が大きかった」と振り返る。DNARの導入により、救急隊が抱えていた心理的な負担は解消。ルール化されたことで、格段に活動しやすくなったという。慌てて119番通報したことで、搬送先の病院で蘇生措置がとられ、後悔している家族も少なくない。鈴木さんは「DNARを運用したことで、搬送を望まない家族の意思と救急隊の使命のミスマッチは解消できる。運用してよかった」と話した。

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