薬剤の微細化で抗がん効果アップ 川崎医科大・日野啓輔教授ら確認


川崎医科大(倉敷市松島)肝胆膵(すい)内科学の日野啓輔教授らのグループは、肝臓がん細胞の増殖を防ぐ薬剤を超微細な粒子にしてマウスに投与すると、効率的に患部まで運ばれ、抗がん効果を高めることを突き止めた。抗がんだけでなく、免疫が高まる効果も確認した。 薬剤は、がん細胞が増殖するのに必要なブドウ糖の吸収を阻害する「2―デオキシ―D―グルコース」。効果は大きいが、高血糖などの副作用があるため、治療には使われていない。 グループは、粉末の薬剤を特殊な方法で50~150ナノメートル(ナノは10億分の1)まで微細化。目印となる無害の蛍光物質を加えた後、肝臓がんにしたマウスの静脈に注射した。1週間後に発光させたところ、肝臓がんの周辺に薬剤が集積。従来の薬剤では“通路”にできなかった血管内皮細胞の層と層の間を通った後、その壁の隙間からしみ出して、効率的に患部へたどり着いた可能性が高いという。 マウス10匹を、薬剤投与群と、非投与群に分けて比較する検証も実施。非投与群はがんの固まりが大きくなるスピードが投与群の2倍以上だった。肝臓がん細胞が薬剤をブドウ糖と間違えて吸収する一方、免疫細胞(Tリンパ球)が寄ってきて、ブドウ糖を優先的に取り込み、その働きを活性化させたためとみている。 微細化したためか、いずれのマウスにも大きな副作用はみられなかった。日野教授は「治療の選択肢を増やせるよう、さらに大きな動物で効果や安全性などを検証し、新たな治療法の確立につなげたい」と話している。

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