高難度診断に「AI」活用へ 血液病・MDS、形態異常を学習


常磐病院(いわき市)の森甚一医師(39)らの研究チームが、血液の病気の一つ「骨髄異形成症候群」(MDS)を医師に代わって診断する人工知能(AI)を開発し、英科学誌サイエンティフィックリポーツに発表した。研究チームによると、MDSを診断するAIの開発は世界で初めて。研究チームは、実用化に向け研究を続け、人間の目では判断が難しい微細なケースも診断できるAIの開発を目指すとしている。研究チームによると、血液内の血球を作る骨髄内には、血球の元となる「造血幹細胞」があるが、加齢に伴いこの細胞の遺伝子に傷が蓄積すると、形態に異常がある細胞が増える。異常な細胞は血液に放出される前に骨髄内で破壊されるため、血液中の血球が減り、MDSが引き起こされる。MDSの診断はこれまで、患者の骨髄液をスライドガラスに薄く引き伸ばして骨髄標本を作成し、医師が顕微鏡で形態異常を確認する必要があった。高度な専門的技能が必要で、特に医療過疎地域では医師の不足から正確な診断ができないことが問題になっていた。研究チームは、医師の診断を再現するAIの開発に着手。常磐病院と福島医大病院で診断された35例のMDS患者から得た骨髄標本を使い、AIに形態異常の一種「低顆粒(かりゅう)」に特徴的な形態を学習させた。学習したAIは、ある一つの細胞が低顆粒かどうかを97.4%の精度で診断できたという。森医師は「人の診断を模倣するAIのみならず、人の能力を超えたAIの特長を生かした研究に取り組みたい」としている。研究チームには森医師のほか、福島医大放射線健康管理学講座の坪倉正治教授らが加わった。

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