脳に電極、念じるだけで車を操作 マスク氏が最新成果


【シリコンバレー=白石武志】米連続起業家のイーロン・マスク氏が設立した医療系スタートアップの米ニューラリンクは28日、開発を進める脳とコンピューターをつなぐ技術の最新の成果を発表した。ブタを使った実演では、頭蓋骨に埋め込んだデバイスが脳内の電気信号を読み取る様子を披露した。2016年設立のニューラリンクは「ブレーン・マシン・インターフェース(BMI)」と呼ぶ技術の開発を進めている。BMIには多くの技術方式が考案されているが、同社では大脳皮質に多数の電極を埋め込み、脳と外部のコンピューターの間で電気信号をやりとりすることを目指している。28日にオンラインで開いた発表会では、直径23ミリメートル、厚さ8ミリメートルのコイン状の「リンク」と呼ぶデバイスを人間の頭蓋骨に埋め込み、近距離無線を使って外部のコンピューターとつなぐ構想を示した。将来的には脳内で念じるだけで車を呼び出したり、テレビゲームを操作したりすることを目標としている。発表会では実際に頭蓋骨にデバイスを埋め込んだブタを登場させ、脳内の電気信号の様子をモニターに映し出すデモを見せた。現段階ではデバイスは読み取り専用だが、将来的には脳内に電気信号を送り込むことも可能になるという。ニューラリンクは開発中のリンクなどについて、米食品医薬品局(FDA)から医療機器として優先的な審査を受けられる「ブレークスルーデバイス」の指定を受けたと明らかにした。当面は脊髄損傷によるまひなどを抱える患者の治療目的で臨床試験を進め、ゆくゆくは誰でも利用できるようにする考えだ。発表会に参加したマスク氏は冒頭で「今回の実演の目的は人材募集だ」と強調した。ニューラリンクでは脳に電極を埋め込む外科手術用ロボットの開発などにも取り組んでいる。マスク氏は実用化に向けて、ロボットやソフトウエア分野の技術者らの採用を拡大する考えを示した。米国ではBMIの研究が盛んで、IT(情報技術)大手ではフェイスブックがウエアラブル端末を使ってコンピューターを操作する技術の開発に取り組んでいると報じられている。米調査会社によると関連する市場の規模は26年に26億7000万ドル(約2800億円)になると見込まれている。

関連記事

ページ上部へ戻る