現場の声反映、専用シールド開発 長泉の企業×静岡がんセンター


新型コロナウイルスの医療従事者への感染を防ぐため、県立静岡がんセンター(長泉町)とプラスチック加工会社「日商産業」(同)がこのほど、飛沫(ひまつ)感染対策用のプラスチック製シールドを開発した。医師らの意見を取り入れた商品で、県内の複数の医療機関で使用されている。同社では他の対策用品の開発にもつなげ、一部は一般企業向けの販売も始まっている。
 開発したのは、気管挿管時と採血時に使用するシールド。中小企業の医療健康分野参入などを支援するファルマバレーセンター(同)が、院内感染を懸念した医師らから対策用品が必要との相談を4月に受け、地元企業に結び付けた。気管挿管は人工呼吸器を装着する際に行うが、患者がせき込むため飛沫感染のリスクが指摘されていた。シールドは、台湾の医師が医療従事者向けに公開している設計図を基に改良・作製。透明のボックス型で、患者の頭部を覆いながら治療ができる。ボックス内に手を入れる穴の位置や大きさなどは、呼吸器内科の医師の意見を取り入れた。
 採血用シールドは、看護師と患者の間を仕切る自立式のついたて。直立ではなく、看護師側に向かって傾斜が付いているのがポイントで「患者に圧迫感を与えないようにしたい」という現場スタッフの要望を反映した。
 いずれも素材は硬質ポリ塩化ビニル。同社によると、飛沫感染対策として使われているシールドはアクリル素材が多いが、アルコール耐性が弱いため、消毒を重ねると曇ったり、割れたりするという。医療現場には向かないと考え、耐久性の高い素材を選んだ。同社は同じ素材で、病院の総合窓口などで使う受付用シールドも製品化。接客業務のある一般企業からも、購入検討の問い合わせが入るという。
 ファルマバレーセンターは、専属コーディネーターを介した地元企業との迅速な産業化マッチングが強み。コロナ禍で緊急性が高まる中、医師の相談から3週間ほどで製品化につなげた。静岡がんセンター血液管理室の梁瀬博文室長代理は「医療者だけでなく患者側の視点も取り入れてもらい、良い形で製品化できた」と話した。

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