九州豪雨、47医療施設が被害 熊本、福岡、鹿児島の3県 地域医療に打撃


九州を中心に続く豪雨で、熊本、福岡、鹿児島の3県で少なくとも47の医療施設が浸水などの被害を受けたことが毎日新聞の取材で判明した。被害の大きかった熊本県では、床上浸水した四つの医療施設が入院患者計89人を別の施設に搬送。一時水没するなどして現在も診療がストップしている施設もあり、地域医療が大きな打撃を受けている。九州7県の担当課や医師会などに毎日新聞が尋ねたところ、病院(入院可能なベッド数20床以上)が23施設、診療所(20床未満)が24施設の合わせて47施設が被害を受けていた。最も多かったのは熊本県の38施設で、福岡県が8施設、鹿児島県は1施設だった。熊本県では、芦北(あしきた)町の病院1施設と診療所1施設、八代市の診療所2施設の計4施設が浸水の影響で入院患者を転院させ、現在も診療を再開できていない。災害拠点病院でもある水俣市立総合医療センターや人吉市の人吉医療センターも浸水したが、いずれも診療体制は維持しており、深刻な浸水被害を受けた病院などから転院患者を受け入れている。10日までに19人の死者が確認された熊本県人吉市。広範囲にわたって氾濫した球磨(くま)川沿いの市中心部に多くの医療機関が集まる。球磨川と支流との合流地点近くにある球磨病院では、4日早朝から付近の冠水が始まり、間もなく1階が水没。水位は一時自動ドアの高さを超えた。約250人の入院患者は3階以上にいて無事だったが、新型コロナウイルス対策で備蓄していたフェースシールドも全て流された。水が引いた後の院内は泥が分厚く積もり、上西(かみにし)大蔵事務長(64)によると「X線や、CT検査用の医療機器なども全部水につかった」という。泥のかき出しは10日にほぼ終わったが、外来診療はストップしたまま。上西事務長は「自然のことだから仕方ないが、早く復旧したい」と疲れた表情をみせた。外来患者にも影響が出ている。市内最大の避難所となっている体育館「人吉スポーツパレス」に身を寄せている女性(72)は、自宅にあった4種類の薬が全て流された。かかりつけの病院は被災して診察できない状態だが、事情を話すと必要書類を準備してくれ、娘に頼んで薬を手に入れた。薬剤師の小野一樹さん(39)が勤務する市内の薬局も水につかり、8割以上の薬が使用できなくなった。小野さんは「薬歴などを管理するコンピューターが壊れ、再開までに1カ月はかかるのでは」と懸念する。妻の頭痛薬を受け取りに来た男性(81)は「薬はあと数日でなくなる」と話し、別の薬局へ向かった。【清水晃平、加藤小夜、宗岡敬介】

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