紙とファクスで混乱した感染状況 国のデータ戦略どこに


新型コロナウイルス感染の「次の波」への懸念が高まる中、専門家が重要課題にあげているのが感染者データの共有と活用だ。「第1波」では紙ベースの集計が多く、全国情報の把握が迅速にできなかった。専門家は、厚生労働省が立ち上げた新集計システムの徹底活用を訴えている。感染者の発生や入退院などは医療機関や保健所がオンラインで入力。情報はネット上に蓄積され、国や都道府県、保健所などが共有できる。「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」(HER―SYS)は、迅速なデータ収集・分析の切り札として5月29日に稼働を開始。保健所を設置する全国155自治体すべてにアクセス権が与えられた。これまでは、新型コロナの感染者を確認した医療機関は手書きの「発生届」をファクスなどで保健所に送り、保健所が記入漏れなどを確認、厚労省や国立感染症研究所とつながる「感染症サーベイランスシステム」(NESID(ネシッド))に入力する仕組みだった。インフルエンザの流行把握など平時には問題がなかったが、新型コロナのような未知の感染症では行き詰まった。NESIDは発生は入力できるが、日々変化する感染者の健康状態や入退院などをフォローできないためだ。そこはファクスや電話などアナログな手法で補わざるを得なかった。厚労省は当初、都道府県や保健所設置市に入退院などのデータをメールで送るよう求めた。だが、感染者が急増すると保健所の業務がパンク状態に。1日の陽性者が全国で700人を超えた4月中旬には、対象自治体の5分の1ほどからしかメールが来なくなった。電話で個別に問い合わせるなどして全国のデータをまとめ、「発生状況」として毎日公表していたが、実態から乖離(かいり)する一方だった。5月9日、厚労省はついにこの…

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