調剤薬局チェーンのナカジマ薬局(札幌)が、大規模災害の際に救護所などで調剤や医薬品の供給をするための災害救援車を道内で初めて導入しました。こうした「動く薬局」は、2011年の東日本大震災をきっかけに全国各地で導入が進められていますが、薬剤師会や大学が主体となる場合が多く、民間企業が単独で企画・開発するケースは珍しいようです。ナカジマ薬局の狙い、そして実際の運用に向けた課題を探ってみました。(経済部 権藤泉)「災害時に患者さんを守るために、私たちに何かできないか。その思いが日に日に強くなっていきました」9月下旬、ナカジマ薬局本社で開かれた発表会で、薬剤師でもある中島久司社長は災害救援車の開発に至った思いを語りました。ナカジマ薬局は、道内を中心に54カ所の調剤薬局を運営しています。18年9月の胆振東部地震と全域停電(ブラックアウト)を踏まえ、社員の安否確認や事業継続のマニュアルを整えましたが、それ以降も風水害の報道や日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震予測などに触れ、危機感を募らせたといいます。被災地の患者に医療サービスを提供し続けるための具体策が必要と考え、約2千万円を投じて災害救援車を導入することを決めました。車両は、キャンピングカー専門のメーカーと共同開発。内部はどのようになっているのでしょうか。後部のドアを開けるとまず目に入るのが、車内上部に取り付けられた錠剤棚。105個の透明ケースが並び、錠剤を種類別に納めることができます。走行中は、ケースが飛び出さないようふたで覆い、固定します。このほか、錠剤や粉薬などを患者一人一人の服薬パターンに沿って袋に詰める分包機や、液体の薬の調剤に必要なシンク、事務作業用の机などが並んでいます。車内高は185センチあり、大人の男性が立って作業できる空間です。ブラックアウトの経験から、外部への電力供給ができる小型大容量発電システムも搭載しました。【関連記事】⇒道内初「動く薬局」 ナカジマ薬局が災害救援車導入⇒<デジタル発>記事一覧