嚥下音を多職種間で共有 食事支援に活かす/社会福祉法人親善福祉協会


社会福祉法人親善福祉協会(横浜市)の介護老人保健施設リハパーク舞岡(同・100床)では、嚥下状態の判定のため、咽喉マイクの使用を業務に取り入れている。録音した嚥下音を、多職種間で共有、検討することにより建設的な議論が可能になり、適切な食事支援へとつながっている。咽喉マイクは、リング状のマイクを喉元に装着し使用するもの。発声時の喉の振動を音声として拾い、状態を把握できる。本来は雑音の多い環境での通話に用いられるもので、家電量販店などでも購入可能だ。しかし、嚥下の判定での使用に十分耐えうるという。具体的には、嚥下状態の確認では、「ゴクン」という飲み込み音や呼吸の音が整っているか、「ゴポゴポ」といった異音がないかをチェックする。嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査より負担が軽いほか、録音した音をNST委員会(医師、看護師、栄養士、介護士から構成される入居者の栄養状態の管理を行う委員会)など、複数の人数で聞けることが強みだ。「全員で同じ音を聞き、状態を客観的に検討できる。導入前より議論が建設的になった」と管理栄養士の苅部康子氏はその効果について語る。咽喉マイクが導入されたのは2016年11月。15年度の介護報酬改定では、経口維持加算の算定要件が変更され、多職種による食事状態の観察(ミールラウンド)やカンファレンスが要件となり、同施設ではそれに力を入れて取り組むこととなっていた。当初は嚥下状態の確認に聴診器を使用していたが、医師である本田守弘施設長は「検査時には正常でも食事の際は嚥下障害が生じる人や、認知機能の低下した人には検査の指示がうまく通らないことなどが課題となっていた」と語る。また、嚥下状態が悪い理由について、看護師、介護士間で見解が分かれ、適切な対策を講じるまで時間がかかっていたという。それらの課題解決のため、本田施設長の意見などからNST委員会で咽喉マイクの利用が提案され、現場で3台導入されることとなった。1台当たりの導入費はマイクとレコーダー合わせて1万数千円で、法人内のイノベーションに関する職員提案に対する奨励金の制度を利用し購入した。導入後、「食事の際に録音した音」をベースに論理的に議論が展開できるようになり、委員間で意見が分かれ、議論が平行線をたどることが減ったという。実際に、録音した音が決め手となり食事の介助方法が見直された例がある。ある入居者の嚥下が悪い理由について、「食形態が合っていない」「好き嫌いの問題」「食事による疲労」など、様々な意見が挙がっており、1つ1つ検討するには手間と時間がかかっていた。そこで、咽喉マイクで嚥下音を確認したところ、食事を摂り始めて5分ほどすると異音の発生を確認。その異音は食形態を変えても発生することから、食事による疲労が原因であるとNST委員会の意見が一致し、「5分は自力で、そのあとは介助に入る」「食事時間が短くて済むようにカロリーを高めにする」といった解決策が講じられた。
「咽喉マイク導入前は解決策の決定まで右往左往していたが、導入後は格段にスピードが上がったと思う」(苅部氏)今後は、委員会メンバーのみならず、現場の介護職員も積極的に活用できるように、知識の共有などに力を入れるという。

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